第62話ドクターオールマイト

蜘蛛の巣女史のつけてくれたふせんの住所なりについたその場所は、中央銀河の郊外、寂れた建物たちと工場群の立ち並ぶ町外れだった。

ドクターオールマイトはその中の、ひときわすり切れきった小工場に住んでいた。

最初ラビィがドクターオールマイトを訪ねたとき、しばらくぶりの来客にドクターオールマイトは目をしばしばさせながらラビィを出迎えた。

「フィットネスクラブだか信用金庫だかの勧誘ならお断りだ。」

出迎えがしらさっそく閉められようとするドアの隙間から、ラビィは蜘蛛の巣女史の書いてくれたドクターオールマイト宛ての紹介状を中にねじこんだ。

「紹介状です。どうか読むだけ読んでください。」

ラビィがそう言うと、中で一間遅れて封筒を開ける音と声がした。

「おおっ、ほほ、なんと、これは、む、あの娘、私の嗜好を覚えていたか。なになに・・・」

紙をめくる音が響きしばらくすると、ギイというおどろおどろしい音とともに玄関のドアが開いた。

「まあそうだな、この手紙に免じて協力してやってもいい。手錠がはずれないだって?どれ、見せてみなさい。」

ラビィは喜んで、顕微鏡を構えるドクターオールマイトに手錠を見せながらこれまでの解錠事情を話して聞かせた。

叩いてもだめ、切ろうとしてもだめ、おまけに酸でも溶けなかった。あとどうしたらいいのだろう。と。

「ふむう、これは魔性性質、つまり魔法で構成された物質であるね。」

ドクターオールマイトが手錠を診ていた顕微鏡から顔を上げてとうとつに言った。

ラビィは思わずはぁ?という顔をしてしまった。

「魔法なんてあるの?」

「あるさ、なんでもというわけにはいかないが。」

ラビィははぁぁと思いふけり顔になって、「科学者の口からこんなことを聞くことになるなんて思わなかったなぁ。」とため息まじりに言った。

そう言ってしまってからちょこ、と遠慮がちにドクターを見ると、

「それで・・・魔法を解くことはできるんですか?」とラビィは機嫌を損ねないように丁寧な態度で聞いた。

ドクターオールマイトはうなる。

「ううむ、そういった類いのことは、魔女に頼むしかあるまい。ここから一番近いところで、ミスティックホールという星にひとり知っているが、魔女はみんな気むずかしいという。それに・・・」

話しも途中にラビィはかけだしていた。

「ありがとう!そう、魔女ご機嫌麗しく、ですよ!大丈夫!」

「ええい話しを聞きなさい!それに、問題は魔女だけじゃない、危険な道行きだよ!」とドクターオールマイトが叫ぶのを後ろに、ラビィは跳ねて跳んで早々出ていった。

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