第10話時計の街

サボテンと別れて水分充分のラビィは夜のうちに砂漠を疾走した。日中は体力を消耗しないように歩いて、疲れたら砂山を軽く作り、陰で休み休み進んだ。そうして砂漠に出て7日目の夜、砂の彼方にとうとう明かりが見えた。ラビィは全速力で走って行った。

砂の山を越えるとそこはカチコチ音があちこち響き、ライトが金銀の歯車を輝かせる時計の街だった。

サボテンの水分がもった。

無事ついた。

ラビィはとびはねて喜んだ。

時計の街はガラスのドームの中にあった。ラビィはドームのゲートに行く。

「おつかれさま、旅人さんだね。」

手にカップを押しつけられる。

「歓迎のフリードリンクだよ。」

中は冷たい冷たい水だった。ラビィは有無を言わず飲んだ。ゴクゴクのどをならして水を飲む。水分が体全体にしみわたる。

「生き返った-。」ラビィの耳がぴょんと立つ。

「ずいぶんかわいてたね、突風砂嵐にでもあったかい。」ゲート員が帽子をくいとあげてラビィを見る。

「それがそうなんだ。大変だった。迷わなかったことだけが救いだった。」

「そうかいそうかい、時計の街製のコンパスのおかげだな。時計の街の工芸品はみんな正確なんだ。さあ、中は機械作りのために涼しいぞ、入った入った。」ゲート員が通路にラビィを押しやり、ゲートを閉め、砂漠の砂をほうきで掃く。

ラビィは通路を抜け、ガラスドームへ入る。カチコチカチコチ、チチチチチ、となんとも心地よい機械音がガラスドームを満たしている。機械仕掛けの時計の街がラビィを出迎えた。

「どうして精密機器に合いそうもない砂漠の端に時計の街なの?部品は熱くなるし、砂が入ったら大変でしょ。」ラビィがゲート員にたずねる。

「正確な日時計がくっきり落ちるからさ、それをもとに正確な工芸品を生んでる。街の中心に行ってみなよ。シンボルの日時計があるよ。」

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