バベルの塔
七瀬
1.世界統一
或る時代、世界政府・共通言語によって世界は統一され、以降1000年ほど平和が訪れていた_____
<世界政府樹立1000周年記念の塔建設現場のふもとにて>
「すっげー!!!」
建設中の巨大な塔を見るなり、よく通る澄んだ声で叫んだのは少年・湊であった。
「恥ずかしいからあんまり大きな声出さないで。」
湊の友人、少女・紗奈は顔を俯きそう言ったが、すぐに雑踏に掻き消されてしまい、彼の耳に届くことはなかった。
世界政府樹立1000周年記念と題して、今後の平和・発展のシンボルとなる塔、「バベルの塔」が建設されている。
世界統一のシンボルが彼らの住む街に建てられる理由は知る由もないが、とにかくそんな事にさえ彼らは心が高騰してしまうような年齢であった。
「しかし、1000年も前に『センソー』があったなんて驚きだよなー。」
「私たちがたまに喧嘩するのと同じなんじゃない?意見がぶつかるのは誰にでもあるよ。」
1000年前の第二次世界大戦終戦以降、参戦国の政府らは半永久的な世界平和・人類平等を叶えるために、世界全体を統治する「世界政府」なるものを樹立し、そこへ全ての国(非参戦国も含めた)を加盟させた。そして、(各国の文化の尊重のために)当時使用されていた言語は各々で継続させつつ、世界共通言語である「WCL(World Common Language)」を作り、その取得を義務教育に取り入れた。
「って、WCLのスピーキング試験来週じゃん!」
紗奈が声を張り上げた。
「おー、紗奈がそんなデカい声出すなんて珍しい。」
少年の方は驚きの余り感情が硬直してしまったようであった。
「私、WCL全然できないんだよね…。」
「俺だって全然話せないから大丈夫!」
「それって大丈夫なの…。」
二人はそんな会話を繰り返しながら帰路を辿った。
その晩、湊のもとへ紗奈から或る電話がかかってきた。
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