花がもたらすもの

@taichi1082


「あ、またここにいる」

いつもの聞きなれたが声が聞こえる


「なんだ、美恵か」

僕はいつも通りの言葉を返し


「いつもその反応してよく飽きないね」

少し笑いながらこっちを向く美恵をよそに僕は淡々と花を摘む


「ここに来るのは私だけでしょ。まったくいつも学校休んで花を摘んでいて大丈夫なの勉強のほうは?」

そう僕は高校2年生。美恵とは幼馴染で中学卒業とともに付き合いはじめた。


「あぁ、僕はいけるところに行くよ。進学できなくても僕には花があるから」

「ほんっと花が好きだよね。私が言えたことじゃないけど」

少し照れながら言葉を落とす

彼女の影響で花が好きになったのが事の発端だ。


この河原には不思議と様々な花が咲いている

花好きの僕と彼女にはぴったりだ


「摘んでる花はどこかに飾ってるの?」


いつもとは違う質問に少し戸惑いながらも

「まぁね。誰も見つけたことのない新しい花を見つけるまでは続けるつもりだよ」


「ふーん」

と腑に落ちなそうな感じで言葉を漏らした

「んーまぁせいぜい頑張って。途方のない花探しを(笑)」

いつもどおりの美恵だ

「おう!任しときな。少し時間かかるけどよ」

その言葉を聞くやすぐに帰っていった。


気付いたら周りは暗くなっていた

ダッシュで家に着くなり


いつも通り母さんがご飯を作ってまってくれていた


「翔也!またこんな時間まで!なにしてたの」

母親の怒鳴り声だ。何度聞いたことか、、、

「友達の家で勉強してたらつい夢中になって時間を...」

とっさについた嘘にしては上出来だろう

「まったく勉強で時間を忘れるなんてそんな嘘通用すると思ってるの!」

母親の勘が鋭いのだろうか。それとも僕の嘘が下手だったのかすぐにばれてしまった。

「もういいわ。早く食べて。片づけたいから」

呆れたように言葉を吐き捨てる

「はーい」

そう適当に返す


次の日


「今日も学校早退しますか。」

母親は仕事なので僕より早く家を出る

「じゃ、行ってきまーす」

だれもいない家に言葉を残す


キーンコーンカーンコーン


4限目が終わるチャイムだ

いつも通り僕は早退し足早に河原に花を摘みに行った。


今日も美恵がキタ


「おーい元気かー?」

ったく昨日会ったばかりだろそう思いながらも

「ぼちぼちだな」

と軽くノッてやった


今日もまたたわいもない会話が始まると思っていた矢先、急に美恵が真顔になり

口をぱくぱくさせながら言葉を発してるかのような動作をしていた

まるでなにかを必死に伝えたがってるかのように

急な意味の分からない行動に戸惑いながらも

「なに?」

と簡単な返しをする


すると美恵は何事もなかったかのように

「ううん、なんでもない」

そうぽつりと言い残し帰ってしまった。


僕は不思議になりながらもいつも通り家に帰った


「またこんな時間までいい加減にわけを教えなさい!」

今日ばかりは逃げられそうにない...

仕方なく花のことについて話した

「僕最近は花を摘みに行ってるんだ」

母はまだよくわかっていないみたいだった

「花?」

「どうして急に?」

美恵について話そうか迷ったが話すことにした

「実はね美恵と付き合ってるんだぁ~」

初めてできた彼女を自慢したかったのかもしれないましてや幼馴染だなんて

僕は早く言いたかったかのような口調で話した。

すると、母は驚いて深刻そうな顔をしながら

「翔也、、美恵ちゃんはね死んでるのよ」

そう言った


「え?」

僕は意味の分からないことを急に言われただ困惑していた

すると口早に母が

「美恵ちゃんはね高校1年生の夏に亡くなったのよ」

と話した


「あ、ああああああああああああああああああああああああああああ」

全てを思い出した


僕は高校一年の夏

毎年夏に開催される花火大会に美恵を誘ったんだっけ

美恵はうれしそうについてきてくれたなぁ...

そのあとは屋台で射的をしたり金魚すくいだって二人でしたっけな

そのあとは....あれ?あ、

「そのあとは何したんだっけ」

不思議と涙がこぼれ落ちそうになっていた

「あ、ああ、、、違う、、忘れてなんかいない、、、」

「そうだ、思い出した、、」

あの後彼女と家に帰る途中あの河原に寄ったんだ

そうだ、

急に彼女が花を見たいっていうから 暗いから明日にしようって言葉もまるで聞こえてないかのように

彼女は一人で走っていったんだ、、、、

僕は、、そこで

「嫌だ、、!思い出したくない!!」

彼女を見たのはそれで最後だった

朝方には遺体で発見されたと母から聞いた

溺死だそうだ

ぼくにはわからなかった 

あの晩一番近くにいた僕がなぜ彼女を救えなかったのか

頭のふたを開けてみるとあの晩のことが鮮明に視界に入ってまるで今を体験しているかのような気持ちになった

「あの晩彼女は川の中に花が咲いている!」と不思議そうに向かっていったんだ

浅いと過信していたのだろう

足を滑らしそのまま川に飲まれてしまったんだ

彼女はずっと僕に助けを求めていたんだ...

僕はどうすることもできなくてただ彼女がおぼれるのを見ていることしかできなかった。

彼女は水に顔がつかる寸前なにか言っていたようなそぶりだった

僕はずっと忘れたふりをしていたんだ

全てを思い出した僕はすぐ家を抜け出し河原に走った

どうしても謝りたかった。

彼女はいつも僕の近くで見守ってくれていたのに僕は、、、

そして最後になにを言ったのか教えてほしかった


無我夢中で走り気づいたら河原だった

彼女は僕が来るのを待っていたかのようにスッと立っていた


「美恵!!」

僕は大声で呼んだ

すると彼女は

「ずっと一緒だよ」

その一言を残して消えてしまった

彼女は最後まで僕のことを気にしていてくれたんだ

そう思うと情けなくなり涙が止まらなかった。

「美恵!ごめん、、こんな俺が生き残って美恵を救えなかった、、」

すると、美恵が最後の贈り物を持ってきたかのように、

目の前にはキレイな花のスノードロップが落ちていた。


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