第40話 新たな2人の運命

悪魔の世界と天使の世界のはざまにたくさんの小さな白い花が草原の上に咲いていた。天国でもない地獄でもない中間地点。どちらに行くか判断される花畑に空から風船に乗って2人落ちて来た。


 生まれたばかりの双子だ。風船がパンと割れて、ぎゃぁぎゃぁ泣いている。


 左がクロンズ、右がヌアンテ。生まれ変わって、兄妹になっている。天使の世界でもなく、悪魔の世界ではない。なぜここにいるのか。まだ赤ちゃんで何も話せない。白いひげを生やした神様が杖を振った。ボンッと煙を上げて、双子の赤ちゃんは一気に17歳くらいの青年と少女に大きくなった。2人とも来ている服は神様と同じ白い神御衣だ。


「ちょっと、なんでここにいるわけ」

 ヌアンテは金髪のツインテールがなびいた。


「俺だって、知ったこっちゃないわ」

 クロンズは黒髪のツンツンと立った髪だった。


「お前らはもう悪魔でもないし、天使でもない」

「え?!」

「マジで?」

「何になったの、おじいさん」

「そうだよ。俺は悪魔になる予定だったのになんでリセットされるんだ」

「人生やり直しがあっていいなぁ」

「いや、うらやましがっている場合じゃないっす」

「そうだよ。おじいさん。私は一体何者?」

「クロンズとヌアンテ」


「…………」

 ヌアンテは無言で神様の頬をぐいーんと伸ばした。


「痛いんですけど?」

「そんなの聞いてないんですけど」

「そうですね。それは知ってますが」

 頬をつままれながら、神様は言う。


「この服着てるってことは、俺らも神様と同じポジション?」

 察しがいいクロンズは考えた。その質問に神様は何度もうなずいた。


「え? そうなの?」

「うそ、マジかよ」

 

 パッと頬から手をはなした。


「えーーー、やだ。このおじいさんと同じ仕事するの?」

(嫌がるところそこ?! 他にあるだろ)

 神様は予想外に驚いた。目を見開いていた。


「俺は、そういう問題じゃない。何が大変ってここの時間把握ができないくらい長いってこと。無理だな、俺。じいさんになるの」


「え、私はおばあさんになるの?」


「違う、違うよ?」

「だってさ、何のご褒美もなくずっと働くんでしょ。つまらないよね」

「いや、だからさ」

「マジ?! 何を楽しみにして生きればいいんだよ」

「あのさ!」

「え? じいさん、何?」

(なんで『お』が抜けた? お前の親戚ではないぞ)

 クロンズとヌアンテはああでもないこうでもないと言いながら、時間が過ぎる。ここの一日は長い。人間でいうところの1年だ。時間感覚のんびりで争いもさける。徳を積んでここに来た人間に天使、悪魔のジャッジをかける場所。その役目が神様だ。天使や悪魔にアドバイスもする。


 1人の男性が現れたが、2人とも来たことに気づかずにスルーして、何も考えずに悪魔の世界の地獄へ進んでしまう。神様は慌てて話に行こうとするがもう手遅れだった。天使の世界に行けたかもしれない。神様がっくり肩を落とす。


「仕事しろ!!!」

「「え??」」

 

 さてはて2人は神様としてのお役目はつとまるのだろうか。

 2人は花かんむりを作りはじめて人間の迷い羊を待ち続けた。

 神様はため息をついて呆れてしまう。

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