第38話 破滅のメテオコメット
黒い雲が晴れて、夜空にはとても綺麗な月が出ていれば、平和が訪れるかに思われた。クロンズたちは高い塔の上、翼を広げ、息吹はクロンズの背中に、奏多はヌアンテの背中に、それぞれ乗って、空高く飛び、悪魔の世界から異次元空間に移動しようとした。横では光宙の上に微宙が乗って追いかけてきた。
「待ってください! ちょっと早すぎます」
「クロンズーー」
コウモリの光宙の翼は小さくて移動距離は小刻みだ。なおさらハリネズミの微宙が乗っている。ちくちくと針が刺さって痛かった。
クロンズは2人の声を気にせずに、そのまま大きく広げた丸い異次元空間に入ろうとした。すると、虹色の空間の前に物々しい黒い影が出現した。
「!!!!!」
クロンズは眉をひそめた。目の前に現れたのは悪魔階級のトップ サタンだった。大きな漆黒の翼を広げて、クロンズたちの前に立ちはばかった。
「クロンズ、何をしている」
それは低い低い声をしていた。どすのきいた声で皆、体が震えて来る。
「あ、あの……この子どもたちを人間世界へ送り届けようとしておりました」
びくびくと頭をさげて目を見ることができなかった。ヌアンテは進もうとしていた道に進めず、サタンの存在に恐れて、後退していた。
「私はそのことを聞いているんじゃない。なぜ、牢屋に閉じ込めたヌアンテを連れ出している。そいつは、悪魔でも天使でもない。出来損ないで、存在価値のないやつだ。なぜ、連れまわす! 指示に従わず、反する気か!!!」
「くっ……」
何も言うことができない魔法をかけられた。言い返す言葉も言えないのだ。クロンズは悔しくて、下唇を噛むと牙が食い込み血が出て来た。
「お前には悪魔になる価値がない。最強にもなれない! 反することはもってのほか。今すぐ処刑だ!!」
サタンは相当のお怒りのようで、大きく腕を伸ばして、両手を広げた。満月には真っ黒な雲がどんどん集まって来る。雷があちこちで鳴り響き始めた。鼻のあたまにぽつんと水が当たった。土砂降りの雨が降って来た。
空中にヌアンテたちはこわがって身を寄せ集まった。
「……ああ」
クロンズは顔に大雨があたりこれからの出来事がとめようがないものだと絶望の淵に立たされていた。
『メテオコメット!!!』
サタンは、おぞましい体に変身して、天に両手をかざし、魔法をかけた。宇宙から大きな隕石がつぎつぎと地面にたたきつけるように降ってきた。サタンの怒りは誰もとめることができない。この世の終わりだ。悪魔の世界、天使の世界。ここにあるすべての世界の破壊が訪れてしまった。サタンの目の前に存在するクロンズだけではない。息吹や奏多、ヌアンテも森羅万象すべてのものが隕石の力により失っていく。あちこちで火災が起こり、建物も人間も悪魔、天使、動物も燃え広がって絶望の世界へと変わってしまった。
何もなくなった。魔法を唱えたサタンでさえも命を落とした。
すべてリセットされた。
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