第36話 ヌアンテの救出
紫の瞳にアスモデウスに転生したヌアンテは、悪魔の世界の牢屋にずっと閉じ込められたままだった。1人のトカゲ兵士がずっと交代制で監視している。何度も逃げ出そうとしたが、巡回のトカゲ兵士見つかってしまい捕まってしまう。ずっとこのまま牢屋で一生を終えるのだろうか。不安で仕方なくなる。
ヌアンテは部屋の隅っこに移動して、膝を抱えていた。ここは地獄。天使として生きて今更悪魔ですかとなっても何だか腑に落ちない。行動パターンは確かに天使のようではなかったかもしれない。この姿になってよかったのかと落ち込む。勝手に前の体からアスモデウスとしての姿に切り替わってしまった。試験を受けてもないのになぜかクロンズよりも上位階級。むしろ、クロンズがなるべき階級じゃないかと思う。ヌアンテはため息をついた。
すると牢屋の天井に異次元空間が丸く現れた。
「ヌアンテ!!」
クロンズの声だった。後ろには息吹、奏多、光宙、微宙も一緒にいる。天使が悪魔になってしまったのに、助けに来るなんてばかみたいと思いながら、涙が出た。
「クロンズ、なんで、ここに」
「……いいから。脱出するぞ。あ、やべ、見つかった」
「何者だ!?」
槍を持ったトカゲ兵士が牢屋の扉を開けて、中に入ってきた。騒がしい様子だと気づいた。さすがは地獄耳だ。
「侵入者だな!!」
ブンブン槍を振り回す。クロンズはジャンプして避ける。
「息吹、何かさけべ!!」
「え、嘘。僕が。ちょっと待って……」
「余計なことを!!」
何かを察したトカゲ兵士は息吹に槍を向けようとした。
『コールドブレス!!』
みるみるうちにトカゲ兵士はかちんこちんに凍っていく。ヌアンテは微宙の隣に移動した。奏多はヌアンテを守るように前に立ちはばかる。
「よし、よくやった」
「クロンズ、次々追いかけて来るよ。どうするの」
「匂いでも嗅ぎつけてきたんだな。ここからの異次元空間は難しいそうだ。棟の上に行くぞ」
悪魔の世界を熟知していたクロンズはなぜか牢屋の配置もよく知っていた。過去にお仕置きとして入ったことがあったのだ。
クロンズの背中に息吹を、ヌアンテの背中に奏多を乗せて、飛び立った。どんどん後ろからたくさんのトカゲ兵士が追いかけて来る。棟の上に続く階段をすれすれに飛ぶ。その間、光宙の上に微宙が乗り、必死で逃げ惑う。
外階段から見える真っ暗な夜空には薄黒い雲が下弦の月に寄り添っていた。曇り空が広がっていて、星は全く見えない。クロンズたちは追いかけてくるトカゲ兵士を振り切って、棟の上に向かう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます