第32話 バットジョーカーとの大決戦

不思議な紫色のキノコを食べた奏多は、ビル6階建ての高さと同じになったバッドジョーカーと同じの大きさになった。体が大きくなって、動かしにくくなる。


「微宙、これ、どうすりゃいいのさ」

「そりゃ、もう。立ち向かって行くしかないよ! あっちはピエロでいろんな技使えちゃうから、警戒しないと大変だよ」

「そ、そんなこと言われても僕、技なんてこのラッパを吹くことしかできないよ」

「今、できることを最大限に使うしかない! やってみて」

 

 微宙は適当なことを言う。やり方を知らないだけだ。技をクロンズがいない今、覚えることができない。生唾を飲み込んだ。大きな体になったバッドジョーカーは、いよいよ奏多の近くに迫って来る。ドキドキして足が震える。

 たくさんの巨大なトランプカードを飛ばしてくる。大きい分、風の抵抗により、遠くに飛ばないようだ。


「へへんだ。届かないよぉーー!」

 

そう言ってる間に刃物のようなカードが飛んできて、危なく、頬を切れそうになる。


「あぶなっ!」

「奏多くん、よそ見しちゃダメ! 早く、ラッパ吹いて!!」


 奏多は大きくうなずいて、巨大化したラッパをバッドジョーカーに向かって吹いてみた。すると、ものすごく大きな音が響いて、自分自身の耳も痛くなるくらいだった。バッドジョーカーにも効果抜群のようで、両耳を塞いで、フラフラとしていた。もう一回思いっきり吹いてみた。さらに嫌がっているようで、目をつぶり、パタリと横に倒れている。


「ちょっと、これ、最高なんですけど!」

「すごいじゃん。あとは、僕に任せて」


 微宙は、さっきピクシーダストが入っていた茶色の小瓶のぽちっと小さなボタンを押した。瓶の中身は空っぽになってるはずだが、どうするんだろうと疑問に感じた奏多だった。微宙はドヤ顔をして、にやにやしていた。みるみるうちに小瓶は掃除機のようにバッドジョーカーが吸い込まれていく。大きな体が小さく細く、しゅるーーーと小瓶の中に入って行った。大きかった体が、小さな小瓶の中で閉じ込められている。どんどんと透明な瓶をたたいて出ようとしていた。


「このままインテリアとして飾っていてもいいね」

「カラフルな赤と白の縞々な服着てるしね。いいかもしれないね」

 

 大きな体の奏多と微宙は両手を挙げて喜んだ。


「この体、どうやったら戻るの?」

「たぶん、紫キノコの効果が切れたら戻れるかと……」

 すると、いつの間にかびょんびょんと奏多の体は縮んでいく。あっという間にハリネズミの微宙に近くなった。


「やっと戻れたね。かっこよかったよ!」

「うん。でも、大きな体にはもうなりたくないかも」

「なんで?」

「ちょっと、動かすの重くて大変だからさ」

「そういうことか。まぁ、良い経験だったね」

「うん。まぁ……。ピエロさんが小瓶の中に入っちゃうとは思わなかったよ」


 奏多は茶色の小瓶に入ったバッドジョーカーを見つめる。


「悪魔のサタン様に届けないといけないからね」

「え? サタン様?」

「それ、悪魔の世界でも有名な指名手配犯だから。ラッキーって思ったよ」

「そうだったの?! そんな強いの捕まえるってすごくない?!」

「うん。そう。頑張ったね。報酬は山分けだよ!!」

「やったぁ、何をもらえるの?」

「えっと……なんだっけかな。わからないなぁ。指名手配犯捕まえるの初めてだし、まさか、奏多くんのネガティブで出てくるとは誰も思わないから」

「僕も思わないよ。でも、微宙は天使の世界でしょう。悪魔の世界に届けられるの?」

「光宙に頼むしかないよね。報酬は、3等分になっちゃうかも」

「それは嫌だな」

「まぁ無事だっただけよかったよ。ね」

「うん。そうだね」

 微宙は奏多に微笑んで、異次元空間の窓を目の前に出した。

「そろそろ、帰ろうか。光宙と息吹くんに報告しないといけないから」

「息吹くんって?」

「もう一人の魔法呼吸ブレスの力を持つ男の子のことだよ。君は魔法ノイズの力を持つ選ばれた戦士なんだ」


 目を丸くして驚いた。戦士という言葉に興奮した。ゲームや漫画で出てくる主人公になれるなんて、夢のようだからだ。


「僕が戦士?」

「あ、急がないと、光宙と息吹くんに知らせなきゃ。行こう!」


 微宙は異空間の窓にすっと入って行く。奏多はこれから何かが始まりそうでわくわくした。学校でルービックキューブを解くことよりも興奮するなんてと自分でもびっくりしていた。


「息吹くんと友達になれるかな」


 少しだけ不安な部分もある奏多だった。

 宇宙空間の中のように異次元空間は静かで虹色であること以外は何もなく。無の世界だ。体を横にマントを付けた戦士のような恰好で微宙に着いて行った。

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