第31話 紫色のあれはおいしいと言うのは難しい

奏多は微宙からに渡された小さな小瓶を手に取ろうとすると、いじわるなバッドジョーカーのトランプカードが飛んできた。ナイフのようにとがったカード。そのまま野菜が切れるはず。奏多の手の甲にまた当たり、すっと線を描いたようにけがをした。


「痛いっ」


「大丈夫、大変だ。早く小瓶拾って!!」

 慌てふためく微宙。奏多は、落ちた小瓶を急いで拾った。


「これ、どうするの!?」

「そのまま開けて、ふりかけて!!」

「うん、わかった」

 

 奏多は、小瓶の蓋を開けて、手のひらに金色ピクシーダストを出してみた。ほんのちょっとしかない。どう扱えばいいか緊張してしまう。


「これをかければいいんだね」

「うん、気をつけてね」

 ふりかけようとすると、再びバッドジョーカーがカードを次々と飛ばしてくる。奏多は、必死で避けた。手の中には、しっかりとピクシーダストを持っている。しゃがんで、体を前転してるうちに少しずつ手の中からこぼれている。


「早くしないと、全部無くなっちゃうかもしれないよ」

「うん、今やってみる」

「それがどうかしたか~?」


 バッドジョーカーが、奏多の真下ににょきっと現れた。分身の術を使ったようで、全部で5体のバッドジョーカーに囲まれた。どれがオリジナルかわからなくなる。次々とトランプカードが飛び交っていく。奏多は頭をあっちやこっちに動かして、降りかかってくるカードを避けた。


「おー、避けるのがうまいねぇ」 


 なぜか褒められていることに背中がぞわぞわとする。耳のピアスの数が2つになっているのが1体だけ片耳だけピアスをつけている。それがオリジナルかもしれないと、奏多はピクシーダストをこれでもかとふりまいた。

 頭からかぶって、金色に輝いている。ふと、時が止まったようだ。バッドジョーカーの体が固まっている。分身の術が煙のように一気に消えていく。


「え? これって本当に効果あるの?」

「まだわからないけど……」

 微宙はどんどん大きくなっている微宙を眺めながら言った。分身の術が切れたと思ったら、目の前のバッドジョーカーは、みるみるうちにビル6階建ての化け物のような大きなになっていた。


「これじゃぁ、つぶされちゃうよね」

「どうするのよ、これ。大きくなれる?僕」

「大きくね、ちょッと待って。注文してみる」


 またさっきの透明ウィンドウ画面から必要な道具をお願いした。

 異次元空間の丸い窓が出て来た。しゅんと真四角な商品が届いた。


「これだよ、奏多くん。食べてみて」

「えーー、僕きのこ好きじゃないよ?」

「シイタケだと思って食べればいいでしょう」

「どこをどう見たら、シイタケなのさ。紫の毒が入ってるみたいなきのこじゃん」

 

 微宙は、箱の中に丁寧に詰め込まれた紫色のきのこを奏多に渡す。匂いを嗅いで確かめるが、あまりいい匂いではない。すっぱい香りだ。鼻につく香りだ。


「腐れてる?」

「いいからぁ!!」


 微宙はジャンプして、奏多の顔に体の針を向けて、きのこを口の中に入れさせた。ものすごく青い顔をして、両手で口を塞いでごくんと飲み込む。気持ち悪くなってくる。そうこうしているうちに奏多の体がどんどん大きくなっていった。奏多が歩くたびに地面が大きく揺れた。バッドジョーカーと同じ大きさになっている。






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