第30話 バッドジョーカーの属性は悪
学校のトイレの壁に異次元空間に続く丸い窓枠に奏多は中へと入って行った。中で新たに発生したモンスターが嘲笑っている。その姿は赤と白のピエロの『バッドジョーカー』は口の裂けた赤いメイクが目立っていた。にやにやと笑っている。
微宙は、奏多と一緒にヘルプ画面をようやく開いた。まだバッドジョーカーは攻撃してこない。じっと見ているだけだった。
「えっと……あのモンスターの属性は〝悪〟だから、弱点となるのは、妖精の攻撃、物理攻撃、昆虫モンスターの攻撃らしいけど……何か技持ってる?」
「え? 僕は今まで技なんて……」
「ん? 今までどうやってモンスターと戦ってきたの?」
「……クロンズに楽器渡されて、それを演奏していたかな」
「あれ、僕、何か勘違いしていたかな。魔法使ってなかった?」
「ううん」
奏多は首を横にふる。微宙は、別な魔法を想像した。
「あ、そっか。あれは奏多くんじゃなくて、息吹くんだ。あの子は、クロンズから魔法教わっていた。うーんと、君は、確か楽器で対抗してノイズモンスターに戦っていたけど、このバッドジョーカーはノイズじゃないから魔法を使わないと勝てないみたいんだよ。どうしよう」
もたもたと微宙と奏多は透明なウィンドウを開いてヘルプ画面を見ていると、後ろからシュンッとトランプカードが飛んできた。描いてあるイラストは、バッドジョーカーとjokerの文字が書かれていた。奏多の手の甲に当たって、傷ができた。
「痛ッ……」
奏多は出て来た血をペロッとなめた。微宙は怖くなって、体中の針をさか立てた。
「けけけ……怖気づいたかぁ? まだまだカードはいっぱいあるんだぞぉ。次はそれでは済まないかもなぁ」
手のひらにたくさんのカードを広げて見せびらかす。トランプカードがプラスチックで出来てるはずだが、1枚だけカードは端が刃物のようになっていた。きらりと光って見えた。
「あれは危険だ」
目をギロリと睨みつけ、自分の衣服を破って包帯代わりに手の甲に巻き付けた。
「奏多くん、どうする? 僕はどうすればいい?」
針をさか立てたまま、びくびくとおびえている微宙は、逃げ腰だ。
手の甲をペロッとなめて、あごに手をつける。見よう見まねでクロンズのように指パッチンをしてみた。魔術や魔法が使えるわけないと思っていた。でも、まさかの空中にラッパが現れた。何の意味があるかわからない。効果あるのかと疑問を持ちながら、目の前に現れたおもちゃのラッパを思いっきり吹いてみた。
ぷぅうううーーーー
地味に変な音が響いた。これから分身の術でだまそうとしていたバッドジョーカーの動きが鈍くなる。効果はあるようだ。
「これで大丈夫?」
「たぶんね。……奏多くん、ちょっと待ってて。妖精さんは出せないけど、これなら大丈夫」
異次元空間の窓に手を伸ばして、ひょいっと、取り出したのは小さい透明な小瓶。中にはキラキラと金色の粉がびっしり入っていた。
「なに、それ?」
「魔法の粉。ピクシーダスト、取り寄せた」
「え? その中は通販?」
「違うよ。お願いするんだよ。注文してさ、これ欲しいって」
透明なウィンドウにある注文確定ボタンがあった。とても現実的だ。
「それって買い物でしょう。大手通販サイトのぱくりだ」
「違うって、これお金払わなくてもいいものだから。そういうの良いから、これ使って攻撃するよ」
微宙は、奏多にキラキラと光る金色の粉が入った小さな小瓶を手渡した。
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