第25話 悪魔の世界に1人の天使

2羽のカラスが垂直に飛んでいく。焦げた真っ黒い木々が広がっている。

ここは悪魔の世界。黒いサソリがぞわぞわと地面を進む。

小さなアリたちが行列を作って巣に戻っていく。

遠くの山にはマグマが飛び交っている。


瞬間移動で現れたのはアスモデウスになったヌアンテとルシファーだった。


レッドカーペットの先にある王座の間には、高位の悪魔たちが勢ぞろいしていた。


「今日の試験は、全体的にまずまずだったな。うちの倅は全然だめだったな。いつになったら、昇格するんだか」


 悪魔の最高位サタンが赤い豪華な王座に座る。サタンを周りを取り囲むように、レヴァタン、アスモデウス、ベルウェゴール、ベルゼフフ、ルシファーの面々が勢ぞろ

いしていた。


「我が家でも勉強のために指導してるんですが、全然親の言うこと聞きませんね」

「そんなもんだよな。うちでもだ」


 レヴァタンとベルウェゴールの2人はうなずきながら、話す。


 「お話中のところ、間を挟むようですが、失礼します」


 ヌアンテとともにするルシファーが、手を会わせてお辞儀した。


「ルシファーのオゴルじゃないか。なんだ、なんだ。そいつは、アスモデウスのようで半分天使の姿だが……本当に悪魔なのか?」


 最高位のサタンがルシファーのオゴルに近づいて、ヌアンテを上から下に目を向けた。目が悪魔の色の紫ではなく、天使の色の水色になっていた。

 あまりにも脅威の力にヌアンテは後退する。背中は冷や汗が出る。


「はい。もちろんです。悪魔の力を持っています。性格も天使ではない。悪魔にふさわしい行動をできるはずです」

「その情報は真実味があるのか?」

「え?」

「完璧な悪魔でなければ、採用できない。だめだ。瞳の色が天使そのものだろ。反逆者だ。明らかに敵だ。いますぐに牢屋にぶち込んでいけ!!」


 サタンはヌアンテのことを悪魔界での脅威でしかなかった。侵入者のように両腕を黒トカゲの兵士につかまれて、牢屋に連れていく。


「なぜですか!」


 ルシファーのオゴルは、納得ができない。サタンに問い詰めたが、ご機嫌を損ねたようで、思いっきり腕を振り払って体を飛ばした。


「くっ……こちらの言い分は聞きもしないか」


 サタンは振り返り、自室のドアを大きな音を立てて、しめた。

 天使に会うことはご法度だったのだ。

 ヌアンテは、何も言えずに言われるがまま、牢屋に閉じ込められて、うなだれた。


「悪魔の姿になっても中途半端になって、悪魔にもなれないのね……」


 がっかりした顔をして、顔を両ひざにうずめた。




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