第23話 ネイビーノイズに遭遇
奏多が大量の涙を流して、クロンズの前に立ちはばかる。ヌアンテが悪魔になってしまったことに信じられなかったが、今は、負傷をしたクロンズを助けないといけないと必死で守ろうとした。今は、クロンズを助けなければならない。それが使命なんだと感じた。助けようと立ちはばかったが、耳が重低音で響きわたる。悪魔のアスモデウスに変身したヌアンテが手のひらをかざして、こちらを紫色の瞳で睨みつけてくる。奏多は両耳を両手でふさいで、首をブンブンと振った。
「わぁーーーーー!」
ノイズに耐えきれず、叫び声をあげる。
「奏多!」
体を動かすことのできないクロンズは名前を呼ぶが、何の効果もない。
「悪あがきはやめておくんだな」
超音波のようにヌアンテの強力な魔力が広がっていく。クロンズも多少、耳に痛みを発した。
「くっ、どうすればいいんだ」
「やめろぉおおおおおお」
奏多は天を仰いで、膝をついた。背中からモンスターが現れた。ネイビーノイズのイルカだった。コンクリートの地面を海のように泳いでいる。奏多がモンスターが背中から出ると、ぱたりとうつ伏せに倒れた。瀕死状態のクロンズの前、戦いに参戦できるのは、コウモリの光宙とハリネズミの微宙だけだ。小さな短剣を横にして、立ち向かおうとする。
「明らかに無理じゃね?」
ちびっこな二人には立ち向かえないだろうと予測する。
「クロンズ、早く回復魔法!!!」
光宙はもっともらしいことを言った。
「そもそも、魔法使えること忘れてたわ。これも、ヌアンテから教わっていたなんて、どんな因縁なんだよ。俺、悪魔なのにさ」
ぶつぶつと言いながら、昔、ヌアンテから転んだ時にけがを直す魔法を教わっていた。本来ならば、悪魔が回復魔法を覚えるのは禁止とされている。それでも覚えられるのは、多少たりとも、天使の力を持っているせいか。詳細は不明だ。
「ちょっと!!クロンズ、はやく回復!!」
ネイビーノイズのイルカが高音を鳴らすと、光宙と微宙のそばに近づいていて、水しぶきをかけた。
「水苦手なのに!!」
微宙は持っていた下敷きを傘がわりにガードした。
『ヒール!!』
クロンズは指をぱちんと鳴らし、自分の体を治癒させた。
その声を聞いて、反応するヌアンテがいる。頭痛がしていた。
過去を思い出したのかもしれない。
「ちょっと、微宙、なんで下敷きなんだよ!! 傘を出しなさいよ」
「え、だって、奏多くんのランドセルに入ってたから使おうって思ってさ。
折り畳み傘、入ってなかったもん」
「そういうことじゃなくて、魔法で出せるでしょうが!」
「そうでした。すいません、先輩」
微宙は光宙に頭が上がらない。
「もう無理じゃないですか!!」
微宙と光宙は後ろからジャバジャバと泳ぎながら追いかけてくるネイビーノイズから走って逃げることに必死だった。水しぶきどころの話ではない。今にも大きなお口の中に入ってしまいそうだった。コウモリはバサバサと翼を何度も動かして、ハリネズミは小さな足を急いで動かしている。逃げるにはもっとスタミナが必要だった。豪快にパクっと食べられては、コンクリートの床に吸い込まれていく。
「おいおいおい。結局食われてるじゃねぇか……。仕方ないなぁ」
全回復したクロンズが腕を振り上げて、指パッチンした。
『タイム!!』
呪文を唱えると空間が灰色になり、時間がクロンズ以外とまって、時計の針の音が響いて、逆戻りしはじめた。2人が食べられる直前にまで戻し、クロンズは近くまで早急に飛び立ち、両手でつかんで助けた。
「あーー、危なかった!!」
「危なかったじゃないだろ、無理だったわ」
「私たちに戦わせようとするのが間違ってますよ!」
「確かに……。まぁ、俺が回復できたんだからいいだろ。
問題はここからだな」
両手で救った2人をうつ伏せになっている奏多の横におろした。
クロンズは転回して、ネイビーノイズに立ち向かって行った。
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