第21話 悪魔への転生
天使であるヌアンテが息絶えたと思われた。
悪魔ルシファーは血だらけのヌアンテを
抱きかかえて移動させようとする。
そこへクロンズがルシファーの手をバシッと
たたいてよけた。
「お、お前にヌアンテを触る価値はない!!!」
「なっ!?己、何を言う?!口を慎め!」
たたかれた手をおさえたルシファーは
大きく腕を振り払い、疾風の力でクロンズと微宙と
光宙を壁にふきとばした。壁に全身を強く打ち、
3人ともそれぞれに地面にたたきのめされた。
骨まで激痛が走る。
体を動かすことが困難だった。
「ちくっしょーー。」
左腕をおさえて、横になったまま動けない。
ハリネズミの微宙とコウモリの光宙は、
小さい体の上に傷も大きく、声すら出なかった。
ルシファーはクロンズたちがそばからいなくなった
ことを確かめて、また抱きかかえる。
体中、あちこちにけがをして、
これでもかというくらいに
出血していた。心臓はもう動いていない。
祭壇の上にヌアンテを寝かせて、懐から短剣を取り出した。
自分の手首を軽く切り、どくんどくんと血管が動いている。
ゆっくりとヌアンテの体にルシファーの血液が、
手首から流れていく。
「これだ。これだ。これなんだ!
我が手に入れたかった力を手に入れた!!
天使が悪魔に代わるのは歴史に残る
史上最強の悪魔になるのだ!!」
ルシファーは両手を挙げて、喜んでいた。
「うぅうぅう……。」
体中にけがをして、動けないクロンズをよそに
こわくて、ずっと隅の方に逃げていた奏多は、
これ以上、どうすればいいかびくびくと足を震わせていた。
壁際で目だけのぞかせて、様子を伺っていた。
ぱたぱたと蛇行しながら、奏多に近づくのは
コウモリの光宙だった。
「奏多くん、だ、大丈夫ですか」
「いや、いや。もう、怖くて無理。そっちの方こそけがしてる。
大丈夫なの?」
光宙の羽根を触る。翼の付け根をけがしていた。
「え?」
「は?」
「あんなにお喋りできなかったのに
僕に話しかけてくれるんですか。」
「え、別に僕は喋れないわけじゃない。
喋りたくなかっただけだよ。
声を出すのにも体力いるでしょ。」
「う、うん。そりゃぁそうですけど……。
ちょっと待ってください!!
奏多くん、ヌアンテが大変なことに……」
微宙が祭壇の上に乗るヌアンテが空中に
浮かび上がり、物々しい雰囲気になっていた。
ルシファーの魔法の力で浮いていたようだ。
両手を挙げて、力を込めている。
「ヌアンテーーーーー!!!」
負傷して、うつ伏せに横になっていた
クロンズが叫んだ。
ピキンという高音のシルバーノイズが響いた。
異空間の空から、光り輝く雪が降り積もっていく。
まぶしい光がヌアンテの体から煌々と輝いている。
前が見えない。
ルシファーは腹の底からものすごい低い声を唱えた。
高い灰色の雲の中から悪魔の上級階級のサタンが
2つの濃紫色の角を生やし、大きな真っ黒の翼を広げて、
静かにルシファーの元に舞い降りた。
サタンは、無言で1つまばたきをして、
空中に浮かぶヌアンテの体に両手をかざした。
すると、空中でブリッヂをしたように、
体がカーブしている。
シルバーノイズの雪が激しく降る。
バァアンと大きい音とともに、ヌアンテの真っ白の体は
サタンの力により、漆黒の体へと変化した。
瞳の色は水色から紫になっている。
茶色だったセミロングの髪の毛は、
真っ黒の腰までの長さのストレートに変化した。
服装は純白のレースでひらひらだったものから
黒いドレスへと変貌をとげた。
ギラギラとヌアンテの紫の瞳が光りだす。
死んでいたと思っていた天使の華奢な体が
以前よりもさらに豊満な胸をちらつかせた
悪魔アスモデウスへと変わってしまった。
クロンズはその姿を見て、ひどく絶望した。
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