第20話 紫のやつら
室内に虹が出現するミラクルが起きると、
新たなミッションが次々と出てきた。
今度はルシファーの後ろから紫色の小ぶりのナスがコロコロとたくさん転がってくる。
クロンズは手のひらから空砲のように空気を送って、こちらに近づかないように打った。それでもナスは消えることはない。後ろに後退したかと思うとしぶとく起き上がり、立ち向かってくる。ナスたちの目はするどく殺気立っている。
ズンズンと重低音を出しながら、襲ってくる。なすの形をしたパープルノイズのモンスターだ。
「クロンズ、どうするんのさ。」
「ちょっと待てよ。今調べるから!」
光宙はクロンズの横をパタパタと
飛んで、様子を伺う。
微宙は、なすに切り込み入れて、
なすの七輪焼きを楽しんでいた。
それでもなお、周りではひゅんひゅんと
なすたちが飛び交っている。
ご機嫌な微宙がいる。
しっかりとお気に入りの昆布だしの
マイしょうゆをかけてなすを堪能
している。
「なんか、こんな混雑している中で
バーベキューしてる……美味しそうな匂い」
「俺、なす大嫌いだからな!!
やっと見つけた。
パープルノイズには、タンバリンだ!」
クロンズは指をパチンと鳴らして、
タンバリンを奏多に渡した。
「え? これでいいの?」
「いいから、早くリズミカルに鳴らせ!!」
「うん、わかった」
奏多は手のひらでタンバリンを
かっこよく、打ち鳴らした。
ひょんひょん飛び交っていたギラギラと
睨むパープルノイズたちは、
タンバリンの音を鳴らすたびにパッと
姿を消していく。
奏多の顔にめがけて飛んでくるパープル
ノイズは、慌てて鳴らしたタンバリンの
音にすぐに反応して、消えた。
どうして、こういうことが起こるのか
不思議だった。
「秋茄子は嫁に食わすなだからなぁ…。」
ボソッとつぶやきながら、微宙が焼けた
ばかりのなすを頬張ろうとした時、
奏多のタンバリンでパッと消えた。
ほろりと涙を静かに流す微宙だった。
「まだ秋じゃないよ?」
「なすって、あいつら本物じゃないって。
ノイズモンスターなんだから!」
「えーーー、なす食べたかった!!」
泣きながら悔しがる微宙は、叫んだ。
その様子を見ていたヌアンテに憑依した
ルシファーはよだれを垂らしてこちらを
見ていた。
首を横に振って、気持ちを切り替える。
「まだまだ序の口だ。」
低い声でそう言うと手を天に翳した。
「パープルノイズが終わったと思ったのに…!」
ルシファーの圧力が酷かった。
クロンズは、すべてのパープルノイズが、
消えたことを確認して、新たな刺客に
驚愕する。
憑依したと思われたヌアンテの体が
空中に浮かび、ルシファーだけが霊体
として現れた。
ノイズモンスターを倒したところで
ヌアンテを救ったことになっていなかった。
上には霊体のルシファー、
下にはヌアンテの体がある。
同時に口元が動く。
「我が名はルシファー。
天使から悪魔に転生するのだ。」
「へ?!転生!?
ちょっと、待てよ。
まさか。そんな‥…やめろ!!」
クロンズは大きな翼を広げ、
ルシファーの元へ近寄った。時は既に遅かった。
ルシファーが手を翳した瞬間に
地面から湧き出る低い重低音ととともに
ヌアンテの体のあちらこちらからたくさんの血が飛び交う。
ルシファーの魔法の力で体中が傷だらけになる。
その場に立っていることさえもできないくらいの怪我を負った。
パタリと地面に体が崩れていく。
クロンズはヌアンテの上半身を
抱き抱えると、口から血を吐き出した。
「おい!ヌアンテ!!ヌアンテ!!
起きろよ。
いつもみたいにバカじゃないのって言ってみろよ!!
おい!!」
息絶えたヌアンテの頬をバシバシと
叩くが、もう何の反応もなかった。
目が紫色に光ったまま、瞳孔は開かない。
「嘘でしょう、
ヌアンテが死んじゃったの?」
奏多は悲しそうに寄り添って泣いている。
「何をしている?!そこから離れろ。」
霊体であるルシファーが
クロンズと奏多に声をかける。
「は?
お前の指図は受けないよ!」
クロンズは手を振り払って、
近づかないように
ヌアンテから遠ざけようとした。
「肉体がない私に何をやっても
意味がないだろう。」
不敵な笑みを浮かべて、
するりとクロンズの体をすり抜けた。
「なにを〜?!」
異次元空間の中、暗雲が立ち込めてくる。
クロンズと奏多は無意識に後退していた。
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