第13話 息吹の葛藤
青く晴れた空に白い雲が
ところどころ浮かんでいた。
太陽もさんさんと輝いている。
ホイッスルが鳴る。
今日は運動会の練習で体育の授業は
徒競走をしていた。
息吹は、泳ぐのが得意だが、
走るのがあまり得意ではない。
スタートラインに5人ずつ並んだ。
幼稚園の時にも運動会はあった。
仲良しのたっくんに負けないと必死に走ったが、その時は2位で終わったのを覚えていた。
小学生になって初めての運動会。
走る距離は増えて、人数もさらに多い。
本番の保護者の観客も幼稚園の時よりさらに多い。
緊張するんだろうなと思いながら、
練習に夢中になるが、どうしても呼吸が
続かない。
日差しも強く、気温も高いからか。
体感温度も上がっている。
コースを走り終えて、
はあはあと肩で息をするくらい疲れている。
必死にゴールに向かうことを考えて、
順位のことなんて覚えてなかった。
「息吹くん!すごいじゃん。
1位だったよ。
その後ろね、たっくんだから。」
クラスで仲の良い女子生徒の朱莉に
声をかけられた。
「え、うん。ありがとう。」
呼吸を整えることに集中していた。
膝に手をあてて、腕で額の汗を拭いた。
1番になれた。
過去に勝てなかったライバルに勝てた。
誇りを持てた。
「いっくん!!!!悔しいよ!!」
1位になれたが、その代償は大きいようだ。
たっくんの
ヒートアップして、
ボクシングみたいになった。
息吹はたっくんの相手をいつもしていた。
でも、本当は嫌だった。
嫌だってはっきり言えない。
相手が傷つくって考えてしまう。
傷ついてるのは自分自身なのに。
我慢してしまう。
「やだ。」
小さい声だった。
繰り返しパンチやキックを
何度もしてくる。
「やーめーろーーー。」
息吹の体からおぞましい真っ黒いものが
ぐんぐんと湧き出てくる。
憎悪の気持ちが体から出てきたようだ。
「なに、なにどうしたの?」
朱莉が慌ただしく動く。
指ぱっちんという音が響いた。
全体的に空間が歪んで、
あたりいちめん真っ白い世界に
移動した。
息吹は、卓郎に使ったパワーで
スタミナが切れたようで、
うつ伏せで倒れてしまった。
息吹の背中から真っ黒い
ドロドロしたモンスターが浮上してきた。
「おいおいおいおい、ちょっと待ってって
まだ心の準備出てないっつーの。」
指パッチンしたのはクロンズだった。
息吹の体からじわじわと湧き出てくる
真っ黒いモンスターが、
空中に飛ぶクロンズに襲ってくる。
クロンズの隣では優雅にこうもりの
光宙が、浮かんでいた。
「そもそも、ここに来るって
心の準備って……。
クロンズ、チキンだね。」
「俺は鶏肉じゃねぇ!!
好きなのはしいて言うなら豚バラ肉だ。
あれはだしが出てうまいんだよな。
油も多いしって何の話だ!!」
「いや、こっちが聞きたいセリフ。」
2人で雑談をしていると、
頭から波のようにざばんと真っ黒
モンスターが襲ってくる。
飲み込まれそうになったが、
ギリギリで回避した。
息吹は地面にうつ伏せで寝転んでいる。
「息吹!!早く起きろーーー。」
「そんな声で起きる訳ないっしょ。」
ヌアンテが呆れてものを言う。
おねえさんぶっている。
今回の敵はなかなか手強いようだ。
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