第22話 悪魔崇拝者とコレクター10/10。
これで終われると思ったが、まだ終わらずに、サンスリーを苛立たせる事が待っていた。
ようやく全てが片付き、激戦のせいで廃墟を通り越して、更地になりかけたシューカシュウの館を離れようとした時、20人の騎士がサンスリーの前に立ち塞がった。
鎧姿に見覚えがある。
前回は深夜の山の中で判別が出来なかったが、今回は開けた場所で空もまだ明るい。装飾に使われる差し色は橙色をしていた。
「治安部隊が何のようだ?」
「貴公は我らがわかるのか?」
「王都第二騎士団。治安維持部隊だ。おおかた、シューカシュウの無茶苦茶な依頼のせいで冒険者達の損害が多くでていて、事情聴取に来た。そんな所だろう?」
王都騎士団は7つの師団からできている。
赤い差し色の第一騎士団は、どの脅威からも王都と国王を守る最強の猛者揃い。
橙の差し色の第二騎士団は、治安維持部隊。今回のようにシューカシュウが手を変え品を変え、何が何でもサンスリーを手に入れようとして、無茶苦茶な依頼を乱発し、著しく治安が乱れた時に、事情聴取と平定の為に訪れる。
黄色の差し色の第三騎士団は、死霊や悪魔祓い専門。
緑色の差し色の第四騎士団は、人間狩り専門で、主に力をつけすぎて手に負えなくなった賊の討伐に出る。
青色の差し色の第五騎士団は、魔物専門で、自然発生し、手に負えない魔物の巣に討伐に出る。
藍色の差し色の第六騎士団は人命救助専門で、災害支援に向かう。
紫色の差し色の第七騎士団は仲介と調停、ドルテに出会った時の領地戦なんかのルールのある内戦や戦争なんかで解決の見込みがないと介入してくる。
頷いた騎士は「君は、ここ数ヶ月の捕獲の仕事に書かれていた人間に酷似している」と言ってサンスリーを見るが、装備は様変わりしてしまっているので、酷似と言っても一致はしていない。
「そうだな。それでここの権力者に捕まってしまい、先程まで洗脳をされかけていた。だが、幸か不幸か悪魔崇拝者が現れて屋敷を無力化してくれて脱出できた」
「ああ、貴公があの悪魔を倒したところを、我々は見ていたよ」
見ていた。
そう、この状況下で孤軍奮闘していたサンスリーを見ていただけで援護の一つもしなかった。
その事に苛立ったサンスリーは、「なら何故出てこなかった?第三騎士団ではないから等と言うつもりか?王都騎士団は民衆の味方ではないのか?そんなだから悪魔崇拝者達が増え続ける」と言いながらひと睨みする。
サンスリーの言い方に不満を見せた騎士団員もいたが、隊長風の男は「済まなかった」と言った後で、「所で、貴公の出自や様々なことが気になる。同行してもらい、調書を書かせてもらいたい。勿論、きちんと食事も寝床も用意する。それに貴公にとっても良い話だと思う。あの依頼の立ち消えまでは今しばらくかかる。我々の庇護下にいた方がいい」と提案してきた。
言っている事は間違っていない。
だが、散々追い回されて、スィンシーを失う事になったサンスリーは、早く1人になりたかったた。
何より、リンフラネトレとの戦闘に出てこず、助けようともしないコイツらには従いたくなかった、
サンスリーは【自由行使権】を見せながら、「悪いが失礼する。俺のことを知りたければ、第七騎士団の奴に「自由行使権を持つゲイザーのことを教えてくれ」と言えばいい。
同行と言っていたのに、それでも拘束しようとすると騎士の腕を掴んで「【自由行使権】があるのに自由がない、王都騎士団がそんな真似はしないよな?それじゃあ詐欺だぞ」と言うと、腕を振りほどき、制止を無視してしまう。
歩き出してすぐ、依頼の立ち消えも何も知らない冒険者達がサンスリーを見て喜ぶと襲いかかってくる。
「ゲイザーはやらせない!」と言ってドルテが飛び出してきた時、初見の黒い光が共に現れて冒険者を返り討ちにした。
思い当たるのは1人しかいない。
「お前…、スィンシーか?」とサンスリーが聞いたが、光は何も答えない。
ドルテの「ゲイザー、助けられたね。まだスィンシーは話せないから、待っててあげてよ。スィンシーにはラヴァと私がママで、パパがゲイザーって教えたよ」と言った声が聞こえてきた気がする。
「助かったのか、ならよかった。まだ?話せるのはドルテだけだろう。まあいい。当分敵が出てくるから警戒と迎撃は任せたぞスィンシー」
スィンシーをファミリアに迎えたサンスリーはまた旅に戻った。
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