第19話 悪魔崇拝者とコレクター07/10。

ドルテの頭を撫でたサンスリーが、「助かった。ドルテはゲイザーとしての俺と繋がったから残っていたのか」と返すと、「にひひ。やっぱりゲイザーの名前の方がいいもん」と笑ったドルテはサンスリーにキスをねだり、サンスリーがキスを返すと「うん。気持ちいいよゲイザー。本当は抱いて貰いたいけど、外は戦闘中だから、いい加減のんびりしてられないんだよね」とドルテが言う。


「了解だ。だがよくソシオ達の名前を知っていたな」


サンスリーはドルテに見せていなかった、残りのファミリアの名前をどうしてドルテが知っているのかを気にすると、ドルテは「ここに皆で住んでいるんだよ。本当ならもっと立派なお屋敷。ゲイザーの家に似てるってレンズが言ってた」と教えてくれる。


「そうだったのか」

「スゥなんて、ちっとも使ってくれないって怒ってたし、セウソイはゲイザーがラヴァばかりだって笑ってたからね」


サンスリーは殺してしまった仲間を思い浮かべて、「言いそうだな」と返すと、「ならドルテを休ませるかな?」と軽口を叩き、ドルテに「やだよ。もっと活躍するからね!」と言われる。


「皆は?」

「もう、そこはラヴァは?でしょ。今はまだ閉じ込められてる。今はゲイザーの心が戻っただけだから、身体に戻って自分の名前を思い出せば出てこれるよ」


ラヴァに会いたかった。

謝りたかったサンスリーだったが、叶わぬ事に少しだけガッカリすると、「ラヴァはいつも嬉しそうに『ずっと一緒、ずっと一緒だよ』って言ってるよ」とドルテが教えてくれる。


「ゲイザーに抱いて貰ったのが羨ましいってさ」

「そんな話までするのか?」


ドルテは裸なのに胸を張り、「そうだよ。私達はファミリア、家族だからね」と言ってはにかむとサンスリーに抱きついた。


「ドルテ?」

「ゲイザー、一個頼まれてよ」


「なんだ?何をして欲しい?」

「生きて」


「何?」

「殺してしまった私達のためにも、私は世界を知りたかった、困った人を助けたかった。クソみたいな権力者をやっつけたかった。でもそれはできなくなった。その代わりにゲイザーは生きて、生き抜いて」


この一言で、何をしても良いと言われたストレスから解放された気がした。


「お前達の為にか?」

「そうだよ。私達のせいにしていい。ゲイザーはとにかく死んじゃダメ。それが私達からのお願いだよゲイザー」


「わかった。生きるさ」

「うん。とりあえず目の前には馬鹿どもがわんさかいて、ゲイザーを殺しに来てるよ」


「ドルテが1人で防いでるのか?」

「そうだよ。疲れちゃうから早く起きてよね」


サンスリーは「わかった。助かったドルテ」と言って、もう一度キスをしながら目を覚ます。


目の前は血の海になっていた。

庭先にはシューカシュウと洗脳技師の遺体、そして周りを飛ぶ真っ赤な光が騎士達の攻撃を寄せ付けない。


赤い光からはドルテの声で「ゲイザーはやらせない!」と聞こえてくる。


「待たせたドルテ。俺の名を忘れたか?俺はサンスリーだ」


この瞬間に心の扉が開き、ラヴァ達が戻ってきた気がする。


ニヤリと笑ったサンスリーが「大盤振る舞いだ。出ろ、ラヴァ。続け、サシュ、ソシオ、スゥ、セウソイ、エムソー」と声をかける。


六つの光がサンスリーから放たれると早い者勝ちだと言わん勢いで飛び交い、サンスリーを処理しようとした騎士達を薙ぎ払っていく。


「遅れずについていけよ。レンズ」


最後に飛び出した光も、弱くはないがまだまだで、だがサンスリーには頼もしさすら感じていた。


八つの光が縦横無尽に飛び交って、シューカシュウの館を破壊していく。


その間にサンスリーは自身の身体に異常がないか確認をすると、シューカシュウは本当にサンスリーをコレクションに加えようとしていたので、装備はそこら辺では手に入らない上等なものになっていた。


「黒銀の装備とは恐れ入るな。身体にも馴染むし、魔法防壁まで付いているのか?このまま貰うとするか」


サンスリーは言いながら騎士から奪った剣を見て、「剣は前の方が良かったな。ここで金目の物でも貰って行って、剣を新調するしかないな」と漏らしながら試し斬りをしていくと、飛び出して行ったドルテが戻ってきてサンスリーを呼ぶ。


「ん?本当になんなんだドルテは、ラヴァ達は呼び戻すまで戻らないぞ?」

「そんなのはいいんだよゲイザー!ヤバいよ!凄いの!凄い剣が置かれてたよ!ゲイザーにピッタリかも!」


そんなドルテの声が聞こえた気がするサンスリーが、ドルテの光に導かれて地下へと向かうと、神殿のような空気感を放つ台座に置かれた金色の剣を見た。


「グランドカイザー…、こんな所にあったのか…」


グランドカイザーは、かつてサンスリーが振るった聖剣で、所有者は別の貴族だったのだが、奪われたか、売却されたのか、回り回ってシューカシュウの元にきていた。


「久しぶりだなグランドカイザー。これからはまた俺と組んでくれ」

サンスリーはグランドカイザーを収納魔法に収めると、めぼしくて換金しやすい物を貰いながら、他にも聖剣なんかの品がないかを探したが、それこそめぼしい物は無かった。

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