第14話 悪魔崇拝者とコレクター02/10。
小屋には3人しかいなかった。
3人家族が仲睦まじく暮らしていた。
サンスリーを見た家主は全てを察し、諦めるとサンスリーを家に通す。
笑顔でサンスリーを迎える元気そうな子供と、穏やかな微笑みの妻。
妻と呼ばれたのが、探すように言われた娘なので年齢は20歳で、子供は10歳くらいだが、見ようによっては親子に見えてしまう。
子供は「お客さんだ。こんにちは」と言ってサンスリーを席に案内すると、人懐っこくサンスリーに抱きついたりする。
子供が本性を見せて襲い掛かってくる可能性を除外せず、一才の油断もなく、ラヴァをいつでも向かわせられるようにしたサンスリーが、「家族か?」と聞くと、妻が答える前に家主の男は手を挙げて「待機して」と言う。
子供はサンスリーの横で、男の横で娘は妻としてではなく洗脳魔法で意思を奪われた人形のように立ち尽くした。
「ええ、あなたは第三騎士団の密偵か何かですか?まさか追いつかれるとは思いませんでした」
家主の男は穏やかに、抵抗するそぶりもなくサンスリーと会話をする。
「俺はその娘を探す依頼を請け負っただけだ。悪魔崇拝者達とは何回かやり合ったことがあるから、手口から追ったさ」
「それは凄いですね。ではかつての友や師たちもあなたに討たれたかもしれませんね」
「万命共有と洗脳魔法を解け」
「お断りします。事情ならお話ししましょう」
家主の男は笑顔を絶やさずにサンスリーに身の上を話す。
元々は悪魔崇拝者で、魔法の才能があった事から悪魔召喚を任される程になった。
だが、最後の召喚は王都第三騎士団の介入で失敗してしまう。
その場は逃げ仰たが、召喚の失敗にまつわる代償は施術者の命。
男は余命幾許もなくなり、仲間達に危害が加わらなければという条件付きだったが、師たちからは好きに命を終わらせていいと言われて暇を貰う。
男は命の終わりに瀕して、初めて自身を救うのは、祈りでも信仰心でもない事に気付き、今まで放棄してきた家族を求めた。
街でたまたま娘を見かけて一目惚れした男は、悪魔崇拝者として人攫いに依頼を出し、「妻」と「子供」を手に入れていた。
「3人で万命共有か?見立てなら1人30年か…」
「少し間違っています。もう私は死んでいますが、それで終わりではない。儀式の代償は今もこの2人が支払ってくれています」
「どうする気だ?」
「あなたは詳しそうだから、あなたこそお分かりでしょう?」
「万命共有を解け、1人で死んでいけ、埋葬ならしてやる」
「お断りします。死ぬ時は3人一緒、家族一緒です」
家主の男は言うなり護身用のナイフを取り出すと、妻に持たせて「私が次に命じたら私を刺すんだ」と言う。
「亡骸は返します。ですが2人は私の妻と子供です」
家主の男が穏やかに、そして何もかもを諦めた厭世的な顔で言った瞬間、サンスリーは「残念だな。この子供に触れて解析は済んだ。万命共有が後がけなら救いようはある」と言い、「解魔法」と唱えると妻子は共に倒れる。
「あなたは解魔法すら使えるのですね?下手をしたら大魔法よりも扱いにくいと言われているのに…」
「ああ、やらされたんだ。これで死ぬのはお前だけだ」
サンスリーが倒れた男の子を抱きかかえながらい言うと、家主の男は「いえ、違います」と言い、すぐに意識を戻した娘は男にナイフを突き立てて崩れ落ちる。
「私はとうの昔に死んでいます。妻に最初にかけたのは万命共有です」
男はそう言うとやり遂げた、満足そうな顔で死んでいった。
迂闊だった。
気の緩みからくる失敗。
子供の方は後から連れてこられて、先に洗脳してから後付けで命を繋がされた。
娘の方は、先に連れてこられて、死ぬ前に万命共有をされてから洗脳されていた。
サンスリーはベッドに男の子を寝かしつけると、先に男の埋葬をする。
男は狂っていたが、どこか覚悟があったのだろう。
死後の備えをしていた。
悪魔崇拝者が使う教典とネックレス、そして手紙を用意していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます