第13話 悪魔崇拝者とコレクター01/10。
厄介な事になっていた。
反転騎士リャントーの話を聞いて、何となく人助けをしたくなり、娘の痕跡を追う依頼を受けたのが1年前。
2ヶ月かかって娘の居場所を見つけたサンスリーは、人攫いから娘の身柄を買い取った男の屋敷に入ると、もぬけの殻だったが、痕跡は残っていた。
男は壊れた元悪魔崇拝者だった。
中々跡を追えなかったのは、領地を2つも跨いだ先まで住処を点々としていて、間に別の人攫いを密輸ブローカーのように雇い、自分たちを攫わせる事で痕跡をうまく隠していた。
人攫いの組織を2つ潰した所で、ようやく悪魔崇拝者達がよく行う手段だと気付き、屋敷で痕跡を見つけ、相手が悪魔崇拝者だと分かってからの足取りを追うのは、サンスリーには簡単な話だった。
だが、同時にサンスリーには嫌な予感があった。
悪魔崇拝者が若い女、それも自称だが生娘を狙って攫い、土地を転々としてまで行いたい事と言えば、そう選択肢はない。
悪魔の依代か悪魔への生贄、どちらにしろ親の手元に連れていくのは難しい。悪魔崇拝者達ならサンスリーの敵ではない。
だが、超常の存在の悪魔が相手になると、強さは魔物の比ではない。
それも悪魔崇拝者がここまで手間をかけて選んだ女なら強力な個体になりかねない。
強力な個体を相手にするには武器が足りない。
ファミリアを使い、持てる技術をつぎ込めば、勝てない戦いではないが、費用効果がない。
そこまでする義理はない。
せめて名剣、聖剣と呼ばれる名高い剣でもあれば話は違うが、手元にはそんな剣はない。
大昔、父の命令で悪魔を狩った時は、父が手配した聖剣が用意されたが、あれはレンタルされたもので、金を積んで買える代物でもないし、オーバースペックな武器は持っているだけで命すら狙われかねない。
せめて、隠れて手に入れて収納魔法の中で寝かせておきたい。
だがまあ聖剣の威力は果てしなかった。
悪魔崇拝者達の館が吹き飛び、生贄の女達をコレでもかと取り込んだ悪魔ですら一刀両断できた。
手に負えなくなれば、悪魔専門の駆除部隊、王都第三騎士団が送り込まれてくる。
武器は悪魔を打ち破ることに特化させて打たれた名剣で、聖剣には及ばないが、騎士団の練度と数の暴力で悪魔を討ち取る。
勿論代金は暴力的な値段で、諸経費含め領主持ち。
だからこそ領主は高額でも常識的な金額で済む聖剣をレンタルでも求めて、聖剣を振るえる剣士を求める。
サンスリーは悪魔化した娘と想定して最悪を考えて、遺品は着ていた服になるかも知れないと思いながら跡を追った。
だが、結果はそれを大きく裏切るものだった。
娘を見つけたのは郊外の小屋だった。
そこは3人家族が住む普通の家だと近くの村で言われた。最近引っ越してきた家族。
それも悪魔崇拝者がよく使う身分で、小屋の地下には隠し部屋が作られていて、日夜悪魔召喚の儀式を執り行っていたり、3人に見えるのは姿形を似せた存在で、実際は何人も住んでいる場合もある。
とりあえず普通でないのは、近くの洞窟なんかに、魔法陣や道具類、儀式の跡が残されていて、魔物や動物の死体が散乱している。
今回も例にもれず洞窟に魔法陣や道具類、儀式の跡が残されていて、魔法陣を見たサンスリーはため息をつき、肩を落としてしまう。
「洗脳魔法と…万命共有…。また厄介だな」
先に魔法陣を見つけていたサンスリーは、二つの筋道を想像していた。
一つは、洗脳魔法で意思を奪い、娘を悪魔崇拝者のスポンサー、権力者の命に当て込む事、娘は20になると聞いていた。80まで生きるとしたら、その命は60年残っていれば、それを娘と権力者で共有…半分ずつにしてしまう。そうすれば権力者は30年生きられる。
娘は30年しか生きられない。2倍で消費した命を支払い、ある日突然死んでしまう。
だが、万命共有にも欠点はある。
命を繋いでも、肉体は老いて朽ちていく。
最後はよくわからない朽木のような物体が、命の消える日を迎える事になる。
だが、その想像とは違っていた。
もう一つの想像こそが正解だった。
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