第9話 怨みとダイヤモンド01/04。
ドルテをファミリアに迎えたサンスリーは、ドルテを鍛えるためにも荒事専門で仕事を受けていた。
サンスリーは唯一のルールとして、どうしようもない場合を除き、一つの街で受ける依頼は一つまで、一つの領地で受ける依頼は三つまでにしていた。
サンスリーが顔を顰めてしまうのは、このドルテが本格的に言う事を聞かずにサンスリーを困らせてしまう事で、「ドルテ、言う事を聞けないなら呼ばないぞ?」と注意するほどに酷かった。
そんなサンスリーの耳にはドルテの「えぇ!?いいじゃんゲイザー!アイツは倒されるべきだったヨォ」と言った言葉が聞こえてくる気がする。
最近は幻聴を疑わず、ドルテと話している気になっているサンスリーは、やれやれと言うが、確かにドルテの言い分もわかっていた。
今回依頼を受けたのは「街で有名な幼女・少女趣味の男の館付近で行方不明になった娘の捜索」と「幼女・少女趣味の男が子供達を殺している証拠を持ってくる事」だった。
十中八九犯人はこの幼女趣味、少女趣味の変態で、問題はその異常さを知りながら、あえて権力者が面白半分に援助をしている事で、サンスリーの見立てでは「ボロが出なければ援助をしてやる」という話で、変態が街の中で隠れて起こす犯罪を白日のもとに晒して、裁きを受けさせたいのだろう。
館に入り、むせ返る血の臭いを鼻に感じた時に、見立ては確信に変わり、館の中を見て男が画家だと分かった時に、援助の意味を理解した。
教育の一環として、各地の画家から絵画を習わされたサンスリーは、ひと目で「才能なし」と呟くと、「成程、無才だから援助か…。ここの権力者もロクでもない」と言いながら、館の中を回ると、地下室で画家が殺したばかりの幼女を前にしながら全裸で絵を描いていた。
怒りは沸く。
だがそれだけだった。
早く制圧をして、証拠を持って帰ろうとした時に、ドルテの「穴にした!許さない!」が聞こえてきた気がして、光と共にドルテが現れると、超加速で画家をズタズタにして、絵筆を持つ左腕は原型を留めていないほどだった。
一瞬の事でサンスリーが制止し遅れた。
サンスリーが「戻れドルテ!」と注意をしてから、幼女や少女の遺体と共に男の身柄を街の人間に渡した。
その後のことはわからない。
わかることといえば、権力者は画家の才能に期待してしまっただけだと言い、即座に断罪を約束して画家を切り捨てる。
画家は絵筆を持てる腕と後ろ盾を失い、責苦の果てに無惨な死が待つだろう。
そして遺族の元には子供達の命が消える瞬間を、下手くそな花火のような色とりどりの絵の具をキャンパスにぶつけただけの絵を渡される。
恐らくタイトルは「命の輝き」かなんかだろう。
様々な画家から絵を習ったサンスリーには、タイトルもコンセプトもわかってしまう。
最後の子供からは、微量だが独特な匂いがした。アレは非合法の禁止薬物を作った時に出る、あまりカスの匂いで、味も酷ければ効果も薄い。それなのにすぐに脳が焼き切れ、心臓が破裂する。
すぐに殺したい相手をオーバードーズさせるには最適なのだろう。
砂糖菓子が置いてあった。
平民には滅多に口にできない砂糖菓子を、食べさせてやると言われてついて行った少女は、食べるだけで未知の性的興奮まで覚えてしまう。そんな砂糖菓子に困惑したが、手を止めたくても止まらない。
たとえ止まっても画家の男に強要されて、幼い命はすぐに消えてしまう。
男は全裸で性的興奮の中、あの汚い絵を描く。
そして、出来た絵のクオリティを見て後悔する。奪ってしまった命への罪悪感を胸に、また絵筆を持つが子供の命抜きではキャンパスに筆は届かない。
認めたくない無才さを誤魔化す為に、男は再び少女や幼女を狙うだろう。
ずっとそれの繰り返しだったのだろう。
サンスリーは報酬を受け取ると街を離れる。
ドルテには「厄介ごとはごめんだ。言う事を聞けないならレンズを鍛えるからな」と釘をを刺していた。
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