第2話 カフェラテ
翌日、俺は学校に向かう。今は正直高橋さんには会いたくはないのだが、今はそんなことを考えても仕方がない。
そして学校に向かう途中で「よ! おはよう」と友達である笹原修平が話しかけてきた。
俺もおはようと返し、一緒に学校へと向かう。くだらない世間話をしながら。
とはいえ、一緒に喋りながら学校へと向かうのは楽しい。
当然女装趣味のことは伝えていないので、女装の話は出来ないのだが。
そしてあっという間に学校についた。修平と共に教室に入ると高橋さんがいた。
正直今は恥ずかしいから会いたくない。しかもそう思っているのが俺だけで、高橋さんは朱里を知っていても、奏のことをクラスメイトであるくらいしか知らないということが一番痛い問題だ。
そして顔をそむけようとするが、
「なに? 用でもあるの?」
そう冷たい視線を向けられた。どうやら自分が思うよりも見つめすぎていたらしい。
俺と高橋さんが関わるのは出来るだけ避けたいところだ。そこで、「いやなにもない」と、言い訳をする。それを聞いて高橋さんは「そう」と言って本を読み始めた。あぶねえ、あと少しで終わっていたところだ。
そして気を取り直して修平と一緒に席に向かう。
「しかし、お前高橋さんのこと気になってるのか?」
親友はいきなりぶち込んできた。先程見つめてしまったからか、めんどくせえ。
「いや、別に」
そう答える。
別の意味で気にはなっているのは本当だがな。朱里の友達として。
学校での高橋さんはクールでいつも一人で本を読んでいる。そこからついたあだ名は『孤高の狼』だ。本人絶対変なあだ名付けられて迷惑してるだろ。
「まあ、高橋さんは男子苦手で有名だからな。これまでも何回も告白を断っているらしいし」
「そうらしいな」
だからこそ昨日は本当に驚いた。いきなり声をかけられて。
まあ、俺が女装してたからだと思うけど。
そしてそのまま高橋さんのことを気にしないでそのまま修平と話した。
そして昼休み、俺はトイレに駆け込む。理由は単純、朱里に理恵子からメールが来たのだ。
内容をチェックすると、(今日、放課後一緒に遊びませんか?)というメールが来ていた。いやいや、学校とテンション違いすぎる。
全く、昨日のあれだけでどうしてここまでなついているのだろうか。まあ、とはいえ、女装がばれなければ俺としては別に問題はない。
それに、女装しながら女子と遊ぶなんて絶対に楽しいことなのだ。というか、俺の夢なのだ。
ぜひ遊びたい! それが俺の気持ちだ。その旨で(ぜひ遊びましょう!)と返信すると、(ありがとう。えっと、今日はカラオケ行きたいんだけど、いい?)と来た。
カラオケだと!? それはまずい。俺は流石に顔や体は女装できても、声までは流石に無理なのだ。
(ごめん。私歌が下手だからカラオケは行きたくない。ごめんね)
そう返す。実際は歌はうまいのだが。
(そっかあ)
と一言帰ってきた後、
(じゃあ、カフェでお茶なんてどう?)
(いいわよ)
(学校帰りに来れる?)
(できれば着替えたいわね)
(じゃあ、四時位にここでよろしくお願いします)
学校が終わるのが三時二〇分だから、女装する時間はある。よし、
(かしこまりました!)
と、スタンプを送って、今日の放課後の予定が決まった。
……てかこれはデートに入るんじゃと思ってしまった。
別に異性として見ているわけではないけれど。
そして、席に戻る。すると、高橋さんが心なしかガッツポーズしている。そんなに朱里とのお出かけが楽しみなのか。
だが、それ以降も高橋さんの様子が変だ。どう考えても機嫌がいい。俺と約束したからなのだろうか。
しかし、本当にどれだけ俺になついてしまってるんだ。
周りからみても明らかに浮ついている。
そして放課後、
「今日は早く帰らないといけない用事があるから、先変えるわ」
と、修平に伝える。というのも、実のところ修平は放課後委員会の話し合いがあるのだ。そのせいで修平が委員会がある時、俺は帰る時間を五〇分遅らせなければならない。いつもはゲームでもして暇つぶしをしているのだが、今日はそう言うわけには行かない。
「分かった。じゃあまた明日な」
「おう」
そして俺はその場を離れ、家に一目散に走った。
そして家に着く。だが、一息つくわけには行かない。すぐに制服を脱ぎ、ワンピースを着たり、ウィッグを付けたり、軽くメイクしたりしたりなど、色々とやることが多いのだ。
そしてそれらをすべて済ました後、すぐに待ち合わせ場所まで走る。
時間は五〇分。間に合うか間に合わないかだ。
そして走って、待ち合わせ場所へとついた。
「お待たせ、理恵子」
「ううん私もさっき来たところ。今日はよろしくね、朱里ちゃん」
「うん。こっちこそ」
そして俺たちは店の中に入りドリンクを頼む。二人ともカフェラテだ。
「そう言えば……昨日私が選んだ服着てるね」
「うん。気に入っちゃって」
「似合ってるよ。最高!」
女言葉ってこれでいいのかな? わからなくなってきた。
「……ところで、朱里ちゃんもいい服着てるよね」
「いいでしょー。これお気に入りなんだよね。だって何より私の可愛さを引き立たせられるし」
「うん、そんな感じがする。やっぱり朱里ちゃんっておしゃれとか好きなの?」
「うん。だって、女は自分を着飾らないとね」
俺男だけど。
本音を言ったら、女装した俺の姿をさらに魅力的にしたいという理由でファッションを好きになったが正解だ。
だからまあ、半分正解と言っていいだろう。
「私、昨日服屋さんに行っててなんなんですけど、おしゃれに無頓着というか、全く分からなくて。だから今度おしゃれの講義とかしてほしいんだけど」
「うん。いいよ! てか私がしたい」
「え?」
「だって、自分を気がざるのも好きだけど、他人をかわいくするのも好きだから」
「そっか。私をじゃんじゃんかわいくして」
「お任せあれ!」
しかし、どうしようか。普通に会話が楽しい。ワンチャン、修平との会話よりも楽しいかもしれん。
「そういえば……朱里ちゃんって、友達っていたりする?」
友達か、いるにはいるが、この場合濁したほうがいい気がする。
もし友達に会わせてとか言われた場合、俺にはその友達を用意することなんてできないのだから。
仕方ないことだ。俺は女ではないのだから。
「いないね」
「同じです!!!」
まあ同じなことは知っている。学校で誰かと話したていること見たことないし。
「そう言えば、昨日なんで私になんで話しかけたの?」
「え……だめでしたか?」
そうはいっていない。俺はただ、なぜ昨日話しかけられたかが気になっていただけだ。
「そうじゃないの。ただ気になっただけなの。昨日の時点でじゃ初対面だったわけだし」
「ああ、それは。私朱里ちゃんのことかわいいなと思って、話しかけたの」
「そう、うれしい!」
と、満面の笑みを見せる。俺の女装姿をやはりかわいいと思っていたという事実で自分のすべてが認められた感じがした。
そしてそれっきり会話が途切れてしまった。正確に言えば、理恵子が頑張って何か話そうとしているが正解か。
俺がしゃべってもいいのだが、今は彼女が話し出すのを待った方がいいなと思う。
「私は、本当にシャイなの。人に話しかけるのが苦手で。だから、昨日は私自身もなんで話しかけられたのか不思議で。でも、そんな私のお願いに応じてくれてありがとう……ございます」
「いや私こそ、話してて楽しいし、話しかけてくれてありがとう」
そして二人でお茶を飲み、そのあと数十分と話した。
「ねえ、また会える? 明日」
「明日ね。ごめん、明日は無理かも」
明日は修平と遊ぶ約束をしている。先約がいる以上明日は無理なのだ。
「じゃあ、明後日は?」
「ちょっと、私と会いたすぎじゃない?」
「だめ?」
「だめじゃないわよ。じゃあ、あさってね」
「うん!」
まあ、明日も会うことになるんだがな。
てか、可愛すぎかよ。この笑顔は守りたいな。
奏がトイレから帰ってくる前、
「高橋さん今日どうしたの? 楽しそうだけど」
「……友達と会うの」
「へーそうなんだ。楽しんできてね」
「うん」
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