第4章―事件編 第41話 東海豪雨② 【2000.9】



 災害発生後、すぐに愛知県知事が記者会見で、AtoBフードサービスの無償提供にて、50万人分のパンや弁当を無料で数日分配布する事を発表された。災害直後の発表にマスコミが大きく取り上げてくれることになり、食中毒でのマイナスイメージが一気に払拭され、市民の強い味方と支持され、わざわざ販売しているスーパードラッグAtoBに買いに来てくれたりした。弁当は、コンビニやスーパーと意識も今回の件で、薬局でも弁当が売っていると認識してくれたことも想定外の出来事だった。


JR東海においても、大きな災害になるとは当初考えておらず運休を避けたい考えから、東京-米原間で多くの列車が団子状態となり、ストップした。博多発東京行きが最大22時間21分遅れと開業以来最悪を記録した。事前に把握していた自分は、JRに対してもパンと水と弁当を提供し、マスコミから取り上げられることとなり、JR東海が非難される一方、AtoBフードサービスは称賛されることとなった。


また、愛知県知事の記者会見が迅速な動きだったため、マスコミから非難は少なく、評価する声が多数聞かれ愛知県知事からも後日感謝される事となった。


そして、愛知県内のスーパーからパンの仕入れをAtoBフードサービスに切り替えたいと様々な会社からいただくことになり、一気に販路が拡大することとなった。




 記者会見で寄付を表明発表された同時刻、名古屋の大手の製菓パン会社のEパン株式会社の社長


テレビのニュースより、被害状況を確認しているところで、愛知県知事と名古屋市長の共同記者会見にて状況の説明とAtoBフードサービス社のパンと水の寄付を早急に避難所に配ると表明されたことを聞き、顔を真っ赤にして常務を呼び出した。


「常務!今テレビ見ているか?AtoBフードがすぐに被災地へ食料の寄付を表明しおってからに、忌々しい。弊社もあまり被害がないと聞いたが、すぐに寄付を発表するぞ。すぐに準備して声明を出して頂くように名古屋市長に連絡をしなさい。」


「テレビは見ていますが、社長、弊社では予備のパンがありません。」

電話の先で常務が困った顔で社長には話していた。


「はぁ、んなバカな。災害対策用に賞味期限の長い商品を余計に生産するように指導しているはずだぞ。」

かなり怒った表情で納得してない社長だった。


「社長、覚えてませんか。数日前にAtoBフードサービスにすべて社長の了承のもと、予備用に作っていたパンを売却したではありませんか。」



――――――――――――――――――――


これは数日前にさかのぼる事になる。Eパン株式会社において、



挨拶にAtoBフードサービスの社長がアポイント取ってEパン株式会社に来社してきた。

「Y乳業から分社化した新会社となりますAtoBフードサービスです。業態が同じであり販売商品がうちと似通ってますので、その挨拶もかねてお邪魔しました。競合相手にもなりませんがよろしくお願いします。」

わざわざAtoBフードサービスの社長である梅田さんが、来社して挨拶をしてくれた。


「わざわざ来社して頂きすみません。こちらこそ切磋琢磨して頑張っていきましょう。挨拶だけのためにわざわざ来て頂いたのですか。」

いぶかしげに新しくできたばかりの会社の社長が来た真意を確かめる事にした。


「分社化したばかりで、製造ラインができたばかりとなっており、現場はてんてこ舞いでパンが生産想定数を下回っております。当分の間生産が追い付かないと思いますので、御社で生産しているパンの予備分を販売してくれませんか。」


「あ、それぐらいなら全然かまいませんよ。常務、予備分のパンなら問題ないよね?」

隣にいる常務に聞いてみた。売れるならいくらでも売ってしまうか。


「はい、予備分であれば全然問題ありませんが、予備分を販売した場合、災害トラブル時に対応ができませんが社長問題ございませんか。」


「常務、災害トラブルなんて起こりそうか?」


「いえ、現状災害と思われるようなことはないと思われます。」


「なら、大丈夫だ。全部お友達価格で売ってしまえ。」


「本当ですか。困っていた所なんです。それも割安で売って頂けるなんて、ほんとありがたい限りです。さすが日本が誇る大手の会社ですね。」


「いえいえ、おなじパン製造会社として今後も一緒に盛り上げていければと思ってます。」


わざわざ挨拶に来て、私らの予備用のパンまで買っていき、容易そうな会社だな。まぁ、うちが儲かるならいいか。と笑顔で受け答えしたEパン株式会社の社長であった。


――――――――――――――――――――


「しまった。見栄を張って全部売ってしまったな。もしかしてこの洪水被害を見越しての事か。」

少し前のAtoBフードサービスが来社して、予備のパンをすべて買い取ったことを思い出した。


「さすがに社長。未来の洪水被害まで見通すことは無理かと思います。いたって偶然と思いますが、如何せん予備用のパンをすべて売ってしまいましたので、寄付できるようなパンがありません。取り急ぎフル稼働させますが、災害時のパンの消費はすごいと思いますので、通常出荷対応でいっぱいだと思います。」


「しまったな。千載一遇のタイミングを逃したな。」

Eパン株式会社の社長は、かなり悔しがったが後の祭りとなった。




名古屋にあるもう一社の製菓パン会社のY製パンも同様の感じでAtoBサービスが予備のパンを販売しており、悔しがったのは後の祭りだった。Y製パン関しては、製造工場の一部に浸水があったので、余計にてんてこ舞いとなってしまった。



これより後、AtoBフードサービスは、大手パン会社の仲間入りする事となり、名古屋に製パン大手会社が3社そろうことになった。

AtoBフードサービスがエーパン。Eパンがイーパン。Y製パンがよいパン。として、3大製パンと呼ばれるようになった。エーパン・イーパン・よいパンとパン3兄弟と言われ、後年歌が歌われ大ヒットしたとかしないとか。


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1999.3  投資会社立ち上げ

1999.4  投資会社 名古屋駅前に本社移転  

1999.8  不動産会社買収  

1999.9  システム部門立上 システム開発開始

1999.10  薬局/病院資本参入    

1999.11  病院/専門学校買収

2000.4  本社移転と決算

2000.7  AtoB貴金属店立ち上げ

2000.8  AtoBフードサービス立ち上げ


災害中大渋滞が発生し、物流はストップするから今回の提案は無理だろうと言われるかもしれませんが、そこはスルーしてください。実際は、店舗まで到着する前に生鮮食品を中心に廃棄した商品が多数あったらしいです。

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