第1章―会社設立編 第5話  掲示板 ”きさらぎ駅”とは     【1999年2月】


 朝食を食べた後、やる事もないので父さんの部屋に行きパソコンを立ち上げインターネットを開けた。昨日開けていた掲示板を覗いてみた所、“きさらぎ駅”のスレに多くの書き込みがついており、予想以上に盛りあがっていた。どこに盛り上がる要素があるんだよと思ったが、スレの最初から読んでみた。



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1 名無しのきさらぎ君

新宿駅から乗って気づいたら“きさらぎ駅”に着いたんだが、だれか同じような体験したやついない?体験したやつ、もしくは聞いたことあるやつはカキコ求む。


2 名無しのきさらぎ君

なんか面白い事かと思ったら、つまらん釣りのためにスレ立てんなや。


3 名無しのきさらぎ君

1乙。まずはもう一回寝てからかきこめ


4 名無しのきさらぎ君

“きさらぎ駅”なんて、存在しない駅を勝手に作るな。乙



250 名無しのきさらぎ君

静岡駅から乗っていたけど寝ていたら、いつもと見ている景色が違う。気になって掲示板に見てたら、似たようなカキコがあったから、書いているがおれも“きさらぎ駅”という名の駅に行くのか?


251 名無しのきさらぎ君

>>250 モチツケ。とりあえず経緯と状況を説明しろ。


258 名無しのきさらぎ君

通勤でいつも電車を使っているんだけど、今日も帰社時だが、友達と飲みに行き、盛り上がってしまっていつもより遅い電車に乗ったんだよな。ふと気づいたら寝てしまって、起きて周りを見渡したら、見たことない風景が眼に飛び込んできて、慌てて今書き込み中なんだよ。


262 名無しのきさらぎ君

他に乗っているのは2人いる。1人は屍のようだが酒に酔って寝ていると思う。もう1人は下をずっと見てる。


264 名無しのきさらぎ君

その2人に話しかけてみればいいだろう?1人は起きているんだろう。


267 名無しのきさらぎ君

そんな他人事みたいに言うな。起きているけど、ブツブツ独り言を言ってて見てるだけで怖いんだぞ。


270 名無しのきさらぎ君

まわりはどんな景色だ?


272 名無しのきさらぎ君

真っ暗なんだよ。田舎でも少しくらい街灯があると思うんだが、それすらないんだよ。めちゃくちゃ怖いぞ。

あっと、線路上の先の方になんか駅のホームみたいなものが見えてきた。


273 名無しのきさらぎ君

それはもしかして??


275 名無しのきさらぎ君

スレと同じ“きさらぎ”駅だ!ドアが開いて、起きてたやつは降りた。寝てる奴は寝たままだ。俺は降りればいいのか?


276 名無しのきさらぎ君

>>275 スレが立っているってことはスレ立てたやつは降りたはずだ。無事に生きて帰れるんだから、お前も降りてみろ。


277 名無しのきさらぎ君

>>275 そこは降りるのは危険だろ。寝てれば夢覚めるぞ。


279 名無しのきさらぎ君

>>276 分かった。降りてみる。一旦スレ閉じるな。また落ち着いたらカキコするわ。


280 名無しのきさらぎ君

>>279 そして彼は旅立つのだった。


281 名無しのきさらぎ君

>>280 俺は女だ。真剣に付き合ってくれた人ありがとう。


283 名無しのきさらぎ君

>>281 乙.続報を裸で正座して待ってるぞ。



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なんとなく理由が分かった。昨日の夜に同じような体験をした者が、実況中継した謎の書き込みがあった。実況中継が静岡駅からの話になっており、いつの間にか静岡駅からたどり着く話にすり替わった。ここから都市伝説が生まれたような盛り上がりだった。


俺は掲示板を見なかったことにして、静かにパソコンの電源を切った。

「図らずも俺は都市伝説を作ってしまった。この話にはかかわらないほうがいいだろう。このスレを2度と見る事はない。」

固く誓って父さんの部屋を後にした。

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