第1章―会社設立編 第4話 父さんへお願い          【1999年2月】


  「はぁー、やっぱり夢じゃないんかぁーぃ。」

翌日寝起きに天井を見たら、昔懐かしの実家の天井だなと思い、布団に包まりながらついつい叫んでしまった。大きな声が母さんに聞こえるとまた怒られると思い、布団の中で叫んでいた。


(少しぐらいは、やっぱり夢だったというネタを想像してたのに、本当に人生2回目ってあるんだ。いや2回目がある俺がおかしいのか。)

と思いながら起きることにした。

寝起きがこんなに軽く起きれるなんて、若いっていいなと数十年感じたことない爽快さで足も軽やかに歩き、

階段をドンドンと駆け下りていった。


「ドンドンと降りてこない。」

結局母さんから怒られた。おれってそんな怒られるキャラだったかな。怒られているが懐かしさのほうがこみあげて、あまり実感が持てなく、まだフワフワした気持ちになるので現実をしっかりと受け止める事にする。



朝食を食べながら、昨日同様に新聞を読んでいた父さんを見ながら、俺は話しかけた。

「父さん、今度平日に休みっていつある?」

「平日の休みか。明後日休む予定だけど、どうした?」

父さんは朝食を食べるのを辞めて、首をかしげ俺のほう見ながら答えた。意外とすぐに休める日を予定していたことに驚いた。


「えっと、おれも大学受かったことだし、株と経済の勉強もしたく株式取引ができる証券口座を持ちたいんだよね。父さんと一緒の証券会社に俺の口座作ってくれない?」

「株なんてお前には早い。株は、金に余裕ができたときに買ってみるもんだぞ。」

新聞を読むのを辞めて、俺の方を向いて呆れた声を出しながら答えた。


「父さん、金に余裕ができる事なんて一生ないよ。毎日、経済新聞見てるし、株取引で試したいことがあるんだよ。おれに社会勉強させると思って付き合ってよ。」

「うーん。分かった分かった。口座を開くだけだぞ。お前に金は貸さんし、借金してまで株取引をやるなよ。」

少し考えながら父さんは少し語気を強め、金を貸さない事を強調してきた。俺は金を借りようとまでは考えてない。お金を稼ぐ大変さは前の世界で嫌というほど知ってるし、父さんから金を借りるつもりはない。少量ながら今まで貯めていた貯金を持っている。その貯金は、親からの小遣いやお年玉だから、元をただせば父さんの懐から出たお金だったことは今は置いておくことにする。


「そこは当たり前だよ。俺の小遣いから勉強しながら運用するよ。」

「運用って、いっちょまえの言葉使って、まぁいいや。パチンコ屋行った後の昼にでも行くか。」

「いや、そこは朝から口座作りに行かせてよ。父さんお願い。」

「せっかくの休みパチンコ屋行く予定だったのに、仕方ない。分かった分かった。」

父さんは、仕方ないなと首をすくめながら、諦めた表情で納得してくれた。


「父さんが持っている口座の証券会社ってどこ?」

「N証券だよ」

「大手か。まぁネット取引ができるところだから問題ないか。じゃぁ、明後日お願いするね。」

父さんは、休みに行く予定だったパチンコの予定を取り上げられたせいかはわからないが、さっそく準備をしてパチンコ屋に行った。休日の午前はだいたいパチンコに行ってた。


父さんと会話したのって久しぶりだな。前世では社会人になってあまり会話した記憶ないなと思いながら話した。

N証券会社は、業界でも最大手の会社だ。当時は、各投資家に担当者がいて。基本電話での株取引だ。株のネット取引はまだ始まったばかりで、ネット間での株取引をやり始めた会社の1つだった。インターネットで株取引をできる会社を探していたから渡りに船だ。

この時代はインターネットで口座開設もできないし、証券会社の支店に行くのめんどいけど、これで今回の人生のスタートを切れるな。


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