第1章―会社設立編
第1章―会社設立編 第3話 ファンタジーと思ったら過去だった 【1999年2月】
周りから輝きが消えて眼を開けれそうだったので、覚悟を決めて思い切って眼を開けてみた。
眼を閉じて開けるまでは、時間的には一瞬だったと思う。この景色は見た事がある部屋だった。見た事がある??自分の記憶の奥底にあった部屋だった。どこかはすぐに思い浮かばないが記憶の奥底にある部屋の天井を見ていた。しかしいつも見ている天井ではない事はたしかだ。
少し時間が経ち、見ている天井が最近ではなく昔住んでいた実家の天井と気づいた。
部屋のベッドの枕元に先ほどまで手に持っていたアイパッドが置かれていた。
(あれ、なにが夢?今の景色は夢?)
布団をめくりながら、眠たい眼をこすり、現状の把握ができない中、一人考えに耽った。
(あ、これは夢だな。すごいリアルな夢だな。さて、現実に戻るためにもう一回寝なおそう。)
とりあえず考える事を放棄して、布団に再度入り直し、眼を閉じ寝なおそうとした。
そんな時だった。誰かが部屋に入ってきた。
「早く起きてきなさい。朝だよ。」
懐かしい声が聞こえた。この声は、たしか母さんの声だった記憶がする。
「ここはどこ?私は誰?」
夢だと思っていたのに、頭がパニックになりながら、なんか最近よく口にする言葉を声に出してみた。
なぜに母さんが俺の目の前にいるんだ。ずっと会っていなかった母さんがいる状況が、最近夢と現実のはざまみたいな状況が続き、なにが現実かよくわからなくなってきた。
「変なこと言ってないで早く起きなさい。」
母さんは、パニックになっている俺をあきれた声で頭を軽くたたきながら起こしてきた。
「母さん、今って令和だっけ。」
頭を叩かれたことで夢ではないのかと思っていたが、今の状況を受け入れつつとりあえず母さんに過去にタイムスリップする人がよく聞く質問をしてみた。
「令和って何よ?早く起きなさい。」
「わかったって。起きるから今西暦何年?」
「何をバカなこと言っているの?西暦1999年よ。」
母さんは俺を見ながら、再びあきれた声で返してきた。
「そっか。ありがとう」
まだ頭が覚め切ってない中、状況に理解できずに欠伸しながらとりあえず答えた。
(えっと俺の記憶が正しければ、さっきまで2024年の世界にいたはず。そして新宿駅から夜中走ってきた幽霊電車に乗って“きさらぎ駅”に降りた瞬間に光に包まれて、その行動が時代を逆行したってことか?)
(たしかに昔に戻れたら人生を変われると思っていたけど、電車に乗って昔の世界に自分の魂を持っていけるってことか。あの幽霊電車は、猫型ロボットでいうタイムマシーンってことか?怖すぎて何回も乗れない事は確かだけど。)
混乱したまま頭が整理できないでいた。
「何を物思いにふけってるか知らないけど、早く起きなさい。」
部屋を出る際にまだ起きない俺に向けて、母さんがまた声をかけてきたため、俺は考える事を止めてとりあえず起きる事にした。
起きながら、肌寒さを感じ近くに掛けてあった上着を着て、廊下を通り懐かしい部屋やトイレを横目に見ながら階段を降りた。
降りた先では、居間で父さんが食パンを食べていた。
父さんの姿を見て俺は過去に来てしまったことを改めて認識した。新聞を見ながら朝食を食べる姿。僕が小さいころから毎日見た姿。前の世界では定年退職後、ソファーに座ってテレビをずっと見ている姿しか覚えてない。やはり仕事をバリバリしているであろうこの時期の威厳がある父は立派だなと思った。
キッチンでは、電子レンジであったまったばかりの食パンにバターをつけ居間まで来て俺に渡しながら、母さんが話しかけてきた。
「とりあえずパンを早く食べなさい。」
「おはよう。」
なんとか頭を動かしつつ、父さんに向けて挨拶をした。母さんから渡された食パンを食べる事にした。
父さんはスポーツ紙を読みながら食べていた。未来で社会人を経験した今、父さんの苦労が社会人での大変さが身に染みてわかった。心の中でお疲れ様とつぶやいた。子供の頃は、子供は大変って勝手に思っていたけど、大人の苦労を知ると子供の大変って何?って感じるな。人間関係だけは、人生の経験が少ない分子供のほうが大変かなと思うが、お金を稼ぐ苦労は大人になってやっとわかった。お小遣いをもらっているだけの子供時代は、楽をしていたかもしれない。親のお手伝いで小遣いもらっている子供は、ほのぼのとしているなと思った。
朝食をさっさと済ませて、今から何をやればいいのかが思いつかなかった。新聞紙の日付けを見たら1999年2月13日(土)となっており、今日は通っている高校が休みだと気づいた。
土曜日と思った所で一息を入れる事ができた。
「ボーっとしてるなら、机の上にあなた宛てに届いた封筒でも開けなさい。」
母さんは、キッチンで洗い物をしながら話しかけてきた。
居間の机の上には、自分宛の受験したであろうと思える大学からの通知の封筒が届いていた。
そっか。今は大学の受験シーズンか。段々とこの時代である過去の自分の状況を思い出してきた。この封筒の中身が“合格”って知っている。知っているが、いや知っているからこそ、ルンルンな気分で封筒を開けた。封筒を開けて通知書には、合格と書いてある。当たり前のことだが、少し安堵して母さんに向けて返事した。
「母さん、受かってたよ。」
「そっか。おめでとう。」
母さんから素っ気無い返事が返ってきた。
「じゃぁ、今日は土曜だから2階のパソコンで遊んでくるね。」
「大学に受かったから、息抜きも必要だけど、ちゃんと勉強しなさいよ。」
「はいはい。」
母さんの声が説教をしようとしたころには、聞こえないとばかりに2階へと駆け上っていた。
あまり聞き取れなかったけど、なにが言いたいかわかっているので、とりあえず返事だけはしておいた。
当時、自分の部屋の隣にある父さんの部屋には、パソコンがあった。
パソコンを立ち上げて、〇chの前身となる「掲示板」を開けた。おれを違う世界に旅立たせた“きさらぎ駅”を調べようとしたが、まだ話題にも上ってなく、タイムスリップのようなスレが見当たらなかった。気になったので“きさらぎ駅”の話題を掲示板に立ち上げてみた。
掲示板にスレを立ち上げ書き込んでみた。
『“きさらぎ駅”を見て降りてしまったが、同じような思いしたやつ他にもいる?』
と書き込みをして反応を見ることにした。30分もしたがだれもレスをしてくれなかったので、諦めて掲示板のページを閉じる事にした。
とりあえず過去に戻った俺は何ができるか考えてみた。自分の部屋に戻ってこちらの世界に持ってくることができたアイパッドを開けた。アイパッドが立ち上がった事に驚き、画面のアイコンを順番にタッチしていくと、ネットが立ち上がった。開けて調べてみると2024年2月9日の前の世界の最新情報を見る事ができた。WBC優勝やサッカーアジアカップ敗退や芸能人の暴露話など、この世界ではあるかわからないが未来の情報を見る事ができた。
(おいおい、これってどうなってる。なぜ未来を検索できる。どこから情報が引っ張れるんだ。)
慌ててネットサーフィンをしながら様々なページをみて気づいた事があった。どのサイトやどのページを見ても2024年2月9日午前2時から情報が更新されない。未来を見る事はできるが、時間は更新されない。しかし2024年より過去の情報は検索で見つける事はできる。2024年2月9日午前2時以前のEC上で閲覧すべての情報を見る事ができると分かった。
この情報を元に新しい人生を歩めるのではないかと気づいた。このアイコンを使うときは紛らわしいので“未来ネット”と言うことにした。
父さんの部屋に戻りパソコンを操作し、株のネット取引が可能か確認してみた。1998年5月に松〇証券が初めて本格的なインターネッ取引を開始したと記載があった。松〇証券が開始してから1年近くたった今では、複数の証券会社が試験的にネット取引を開始していた。ネット取引ができる事が把握できたが当たり前であるが、高校生の俺には口座がない。
証券会社の口座がなければ株の取引きを含めて何もできない。ネット取引がしたいのにネットでの口座登録が可能な証券会社は当時あまり多くなかった。基本どの会社も対面で口座を作成後、ネット取引が可能と記載があった。
証券会社の口座開設に関しては、父さんに頼んで一緒に口座を作りに行くかな。と思った。
いろいろと今後の方針を決めながら、パソコンのゲームをやり時間を過ごした。
このころのパソコンのゲームは、懐かしすぎる。戦国物のゲームだったが久しぶりにやりこんでしまった。信長の野〇である。時間を忘れてゲームやるなんて何十年ぶりかな。頭がまだ前世を引きづっている状態だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます