第30話 存在証明

《千葉県、某所》

『…ザンッ!!』

 勢いよく、キョンの超生類ちょうせいるいの喉元に、日本刀が突き刺さる

「有象無象が…」

 日本刀を突き刺した佐藤陸曹長は言う

 そして、佐藤陸曹長が顔を上げ、前を見ると、そこには、あらゆる武器を手にしたキョンの超生類ちょうせいるいの大群が居た

「巫山戯るな…

 巫山戯るなよ、人間共が…!!」

 一頭のキョンの超生類ちょうせいるいが叫び、続けて、

「お前達の自己満で、この地に連れて来られ…

 お前達の自己中で、野に放たれた…

 それなのに…

 鳴き声が悲鳴だと、忌み嫌われ…

 数が増え過ぎだと、害獣扱いされ…

 我々は、普通に生活しているだけに過ぎないのに…

 鳴き声だって、ただコミュニケーションを取っているだけだというのに…

 お前達が言葉を喋るように…」

 と、言うのだった

「だからといって、人間達を殺しても良い理由にはならない…」

 佐藤陸曹長は、そう言う

「そっくりそのまま返させて頂く…!

 だからといって、我々を害獣扱いして良い理由にもならない…!」

 そのキョンの超生類ちょうせいるいは、そう答える

 日本刀をゆっくりと引き抜く佐藤陸曹長

「だから、責任を取るんだ…

 お前達を駆逐する事で…!!」

『シュッ!』

 日本刀に付いた血を振り払いながら、佐藤陸曹長は言うのだった


「…!

 クソが…!!」

 そう叫びながら、一頭のキョンの超生類ちょうせいるいは飛び掛かり、手に持っていた槍を振り下ろす

『ガシンッ!!』

 佐藤陸曹長はその槍を、日本刀で受け止める

『ギシギシ…』

 せめぎ合う日本刀と、槍

『キシンッ…!』

 佐藤陸曹長の日本刀が、槍を押し返す

 槍を弾かれ、少し後退りをするキョンの超生類ちょうせいるい

 しかし、キョンの超生類ちょうせいるいは、間を空ける事無く、再び攻撃を繰り出すのだった


『シュッ、シュッ、シュッ!!』

 縦に、横に、次から次へと槍を振るキョンの超生類ちょうせいるい

 だが、佐藤陸曹長はその攻撃を華麗に躱し続ける

 すると、キョンの超生類ちょうせいるいは、突き攻撃も織り交ぜるのだった

 しかし、

『キシンッ!!』

 佐藤陸曹長はその突きさえも、日本刀で往なしながら、躱す


『カンッ…!』

 槍を弾かれ、一旦距離を取るキョンの超生類ちょうせいるい

「どうした、その程度か…?

 我々を殺すのではなかったのか…?」

 佐藤陸曹長が問う

「…」

 言葉を返せないキョンの超生類ちょうせいるい

「そっちがその程度でも、此方は本気で駆逐しに行くぞ…!」

 佐藤陸曹長は鋭い眼光で、言うのだった


 そして、次の瞬間、佐藤陸曹長は一気に間合いを詰めてきて、日本刀を次々振り下ろし、又は振り切り、連撃を繰り出す

『ガンッ、ガンッ、ガンッ!!』

 槍の柄の部分で、佐藤陸曹長の連撃を受け止める事しか出来ないキョンの超生類ちょうせいるい

 しかし、その時だった

『ガンッ!

 …バキッ!!』

「…!?」

 攻撃を受け止めた槍の柄の部分が、真っ二つに折れる

 そして、

『ドンッ!!』

 槍が折れて、がら空きとなったキョンの超生類ちょうせいるいの懐に、佐藤陸曹長は前蹴りを食らわすのだった


『ボンッ…!』

 蹴り飛ばされ、キョンの超生類ちょうせいるいは砂煙に包まれる

「ハアハア…」

 体勢を立て直そうとするキョンの超生類ちょうせいるい

 すると、

「長引かせても意味がない…

 さっさと終わらせる…」

 佐藤陸曹長はそう言うと、

『コンッ…』

 空になった注射器が地面に転がるのだった

『…ヴォァ』

 その瞬間、佐藤陸曹長の日本刀が炎に包まれる

「…!」

 追い込まれた表情を見せるキョンの超生類ちょうせいるい


 だが、次の瞬間だった

『…ペチャ

 …ペチャ

 …ペチャ』

 どこかで聞き覚えのある足音が響く

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