第27話 ロールアウト

《アメリカ合衆国、アラスカ》

 自然豊かな森林が、辺り一面に広がる

 そんな森林の中、

「ウォォォ!!」

 雄叫びを上げながら、鉤爪を振り下ろすグリズリーの超生類ちょうせいるい

『ザンッ!』

 身体を引き裂かれるアメリカ軍の兵士


 更に、

『ウァオ、ガブッ!

 ウァオ、ガブッ!!』

「…クッ!」

 二頭のコヨーテの超生類ちょうせいるいが、一人のアメリカ軍の兵士に、立て続けに噛み付く

 噛み付かれたアメリカ軍の兵士は、そのまま押し倒されるように、後方へと倒れる

「大した事無いな、人間というのも…」

 コヨーテの超生類ちょうせいるいの片方が、口元から人間の血を垂らしながら、呟くのだった


《同時刻、アラスカ近郊の上空》

 数機の大型輸送機が、空を飛んでいた

「もうすぐ、アラスカ州に入ります…」

 無線越しに、そう告げられる

「総員、出撃準備…」

 とある男性兵士が、インカムを通して言うのだった

 そして、

『ウィーン…』

 大型輸送機のハッチが、ゆっくりと開く

 すると、その中から姿を現したのは、人間よりも一回り、二回り程大きい、人型のロボットであった

 そのロボットは片膝をついた状態で、格納されていた

 そして、次の瞬間、

「対超生類ちょうせいるい、新型兵器、グングニル…

 総員、出撃…!!」

 その合図と同時に、人型のロボット兵器達は、載っていたパレットと共に、輸送機の外へと放出されていくのだった


 次々と放出されるロボット兵器

 放出されて直ぐに、パレットとも散け、落下していく

 しかし、次の瞬間、

『ピンッ…!』

 ロボット兵器が起動して、縮こまっていた身体を伸ばし、体勢を整えて、自然落下していくのだった


 物凄い勢いで落下していくロボット兵器

 近付いてくる地面の森林達

 そして、次の瞬間、

『…バサッ!』

 ロボット兵器達はパラシュートを展開して、着地しようとする

『ガサッ…!

 ガサガサガサ…』

 木々にパラシュートが引っ掛かりながらも、着地するロボット兵器達

『ガシンッ…!

 …ドンッ!』

 パラシュート部分をパージして、地上に降り立つロボット兵器、グングニル

「これより、超生類ちょうせいるいの殲滅を開始する…!」

 インカムを付けた男性兵士が、言う

 すると、ロボット兵器達は、

『キュィィン…!』

 踵部分のタイヤを駆動させ、ローラースケートのように、滑って走り出すのだった


『シィィ…!

 シィィ…!

 シィィ…!』

 高さ2メートル超のロボット兵器達が、森林の中を駆け抜ける


『…ピクッ!』

 コヨーテの超生類ちょうせいるいの耳が、何かを捉え、反応するのだった

「何か来る…!?」

 そのコヨーテの超生類ちょうせいるいが呟いた次の瞬間、

『…グィィィ!』

 ロボット兵器、グングニルが、滑り込んできて、目の前に姿を現す

 そして、次の瞬間、

『ドゥッ、ドゥッ、ドゥッ…!!』

 手に持っていた銃型の兵器を構え、透かさず放つのだった


 弾丸が、コヨーテの超生類ちょうせいるい達の身体を貫く

「…!

 止めろ…!!」

 すると、グリズリーの超生類ちょうせいるいが、グングニルの銃撃を止めようと、右腕を振り上げる

 そして、そのまま攻撃しようと振り下ろそうとした時であった

『…ガンッ!!』

「…!?」

 別のグングニルが、そのグリズリーの超生類ちょうせいるいの攻撃を、左腕で受け止める


『ギシギシ…』

 せめぎ合うグリズリーの超生類ちょうせいるいの鉤爪と、受け止めるグングニルの左腕

「そんな機械に頼った所で、我々には勝てないぞ…!!」

 グリズリーの超生類ちょうせいるいは、叫ぶ

 しかし、

『ガンッ!!』

「!?」

 グリズリーの超生類ちょうせいるいは、せめぎ合いに負け、弾かれるのだった


 森林の中の戦場は、超生類ちょうせいるい達が押されていた

『ババババ…!!』

 銃型の兵器を乱射しながら、森林を駆け抜けるグングニルの集団

 その銃撃に、超生類ちょうせいるい達は次々と倒れていく

 その光景を眺めるグリズリーの超生類ちょうせいるい

「ふざけるな…

 こんな事、あってはならない…」

 と呟き、次の瞬間、

「…クッ!

 同胞達よ…!

 ここは一時、撤退だ…!!」

 と叫ぶのだった


 超生類ちょうせいるい達は、グングニルの集団に背を向け、駆け出していく

 だが、

「逃がすと思うか…?」

 一機のグングニルから、そんな声がする

 そして、次の瞬間、

『ボンッ!』

 グングニルが、背中に背負っていた米俵サイズの円柱型のポットを二つ、地面に落とすように、パージするのだった

 更に他のグングニルも、同じようにポットをパージする

 すると、次の瞬間、

『ガシンッ…!』

 その円柱型のポットの下半分が開き、蟹のような四本の足が出てきて、立つのだった


「イラザ…!

 オートマタの制御を…

 目標を殲滅せよ…!!」

『…ピコンッ!』

 グングニルから、そのような声がして、足が生えたポットに、モノアイの目が光る

 そして、

『ガシガシ…!』

 そのポット達は、蜘蛛が歩くように歩き出し、超生類ちょうせいるい達を追い掛けていくのだった


 森林を駆け抜ける超生類ちょうせいるいと、それを追うオートマタ

「こいつら…

 しつこい…!」

 逃げるグリズリーの超生類ちょうせいるいは、そう思う

「目標、捕捉中…

 逃走ルートを予測、パターン化…」

 オートマタは、そんな機械音を発し、次の瞬間、何体かのオートマタが散っていくのだった


「こいつら…!

 分かれた…!?」

 グリズリーの超生類ちょうせいるいが、そう考えていた瞬間、

『ガシガシ…!!』

 一体のオートマタが、グリズリーの超生類ちょうせいるいの横を併走していた

「…!?」

 すると、次の瞬間、円柱型のポットの底から、逆さ状態の砲台が現れ、銃身がこちらを向く

 そして、

「ババババ!!」

 透かさず発砲するのだった


「…クッ!」

 グリズリーの超生類ちょうせいるいは、慌てて止まり、方向転換する

 銃身を向けてきたオートマタには、背を向ける形にはなるが、近いのはダメだと思い、そのオートマタとは距離を取る方向へと走り直す

『シュン!

 シュン!

 シュン!』

 弾丸は当たらず、身体の際を抜けていく

 一安心するグリズリーの超生類ちょうせいるい

 しかし、

「…!?」

『…ピンッ!』

 目の前で、赤い1点の光が光る

 一体のオートマタが先回りしていた

『…バンッ!!』

 一発の銃撃音が、森林に響き渡るのだった


『ガシンッ…』

 人型のロボット兵器、グングニルのもとへと、戻ってくるオートマタ達

「イラザ、報告せよ…」

 グングニルから、そんな声がする

「周囲一帯に、生命反応は無し…

 超生類ちょうせいるいは、殲滅されたと考えられます…」

 オートマタが伝える

「では、総員…

 撤収準備だ…」

 グングニルから、そう言う声がするのだった


《同時刻、アメリカ国防総省内》

 そこには、ドライブシミュレーターのようなコックピットを模した筐体が、複数台並んでいた

『ウィーン…』

 座席が後ろに下がり、パイロットが姿を現す

 そのパイロットは、耳にはインカム、目元にはVRゴーグルのような機器を着けていた

「任務完了…」

 ゴーグルを取りながら、男性兵士は言う

《名前:ライル・エドモンズ

 肩書き:アメリカ軍、グングニル部隊、隊長》

 人型のロボット兵器、グングニルは遠隔で、モニター越しに、操縦されていたのだった

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