第26話 駆け巡る思い

《兵庫、六甲山付近》

「総員、抜刀…!」

 佐藤陸曹長の合図で、日本刀を一斉に抜く黒い制服姿の隊員達

「総員、殲滅開始…!」

 佐藤陸曹長の次のその合図で、隊員達は一斉に駆け出す

 迫り来る隊員達

「撃て…!」

『ババババ!!』

 迫り来る隊員達に、迎え撃つ猪の超生類ちょうせいるい達は、その合図でライフル銃を一斉に発砲するのだった


『キンッ、キンッ、キンッ…!』

 しかし、隊員達は日本刀で銃弾を弾きながら、歩みを止める事無く、迫り来る

 そして

『ザンッ!

 ザンッ!!』

 次々と猪の超生類ちょうせいるいを斬り裂いていく隊員達

「…クッ!

 クソが…!!」

 一頭の猪の超生類ちょうせいるいが、そう叫びながら、ライフル銃を構え、更にその銃を放とうとする

 だが、次の瞬間

『スパンッ…!』

「…!?」

 佐藤陸曹長は、その猪の超生類ちょうせいるいの背後を取っており

『カチッ…』

 日本刀を鞘に収めたその時、猪の超生類ちょうせいるいの身体は腕、脚、胴体と、バラバラになるのだった


「猪突猛進…!!」

 そう叫びながら、突進する一頭の猪の超生類ちょうせいるい

『ドオンッ!』

 その猪の超生類ちょうせいるいの突進を、刀で受け止める隊員の一人

『ギィィィィ…!』

 猪の超生類ちょうせいるいの牙と、刀とが軋み合う

 しかし、その時

『キンッ!!』

 隊員は、猪の超生類ちょうせいるいの突進を、後方へといなした

 突進をいなされた猪の超生類ちょうせいるいは、体勢を整えながら、急いで振り返り、再び攻撃しようとする

 だが、次の瞬間

炎獅子えんじし…!」

 隊員のその呟きと同時に、炎の閃光が一筋、猪の超生類ちょうせいるいの身体を、縦に真っ二つに裂くように走るのだった

 ゆっくりと裂ける猪の超生類ちょうせいるいの身体

 身体の裂け口は炎で焼けていた


『タタタタ…』

「烈火…!」

『ザンッ!

 ザンッ!

 ザンッ!!』

 戦場を駆け抜けながら、次から次へと猪の超生類ちょうせいるいを、炎を纏った日本刀で、斬り付けていく隊員

 そして

『ドテッ…

 バタンッ…!』

 最後に斬り付けた猪の超生類ちょうせいるいの頭が斬り落とされ、その猪の超生類ちょうせいるいは膝から崩れ落ちるのだった


『シュュ…

 …カチンッ!』

 納刀される日本刀

超生類ちょうせいるいの殲滅、完了しました…

 こちらに負傷者は居ません」

 隊員の一人が、佐藤陸曹長に伝える

「了解した…

 超生類ちょうせいるいの死骸を回収後、直ちに撤退する…!」

 佐藤陸曹長は、そう言い返した

 すると、暫く佐藤陸曹長は、闘いが終わった戦場と、辺りに転がる猪の超生類ちょうせいるい達の遺体を無言で見詰め

「まだだ…

 まだ、これからだ…」

 と呟く

 その後、次の瞬間

『…バサッ』

 佐藤陸曹長は、黒い制服を勢いよく翻して振り向き、その場を後にするのだった


《アメリカ合衆国、とある場所》

『コン、コン、コン…』

 ノックされる木製の扉

「入れ…」

 扉の向こうから、男性の声がした

「…失礼します」

 その言葉と同時に、一人の男性が部屋の中へと入ってくる

「日本に居る諜報員からの報告です…

 日本政府が超生類ちょうせいるいの撃退及び、死骸の回収に成功したのでは無いかとの報告が…」

 男性は部屋に入ってくるなり、そう言う

「それは確かか…?」

 部屋の中のデスクで、作業していた別の男性は聞き返す

「自衛隊の中に、対超生類ちょうせいるいを専門とする部隊が設立されている所までは確認済です…」

 部下らしき男性は、そう答える

「……

 軍に伝えろ…

 新兵器のロールアウトを急げと…!」

 デスクの男性は、険しい表情で言うのだった

《名前:アレックス・ブラックスマン

 肩書き:アメリカ合衆国大統領》

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