第21話 翼

《青森、三沢飛行場

 別名、三沢基地》

 その基地内の格納庫

 F-35戦闘機が、複数並んで、停まっていた

 その中の一機の戦闘機のコックピットと、タラップとで、話し合うパイロットの自衛隊員と整備士

「計器などに異常は見られなかった…

 問題ない…」

 パイロットの自衛隊員は言う

「それなら良かったです…!

 訓練はしているとはいえ、この国で実戦となったら、全てが初ですからね…」

 整備士は、そう言うのだった


 すると、そんな時

『ウーン、ウーン、ウーン…!!』

 基地内の警報が鳴り響く

「…!?」

『第301飛行隊、直ちにスクランブルせよ…!

 第301飛行隊、直ちにスクランブルせよ…!!』

「何事だ…!?」

 パイロットの自衛隊員は言う

 だが、次の瞬間だった


『ブフォンッ!!』

 突然、爆音が響き渡る

「次から次へと…

 今度は、何事だ…!?

 考えてる暇は無いか…

 タラップを切り離せ…!

 直ちに出る…!」

 パイロットの自衛隊員は、そう言い、ヘルメットのアイシールドを下ろす

「ご武運を…!」

 整備士はそう言って、コックピットの扉を閉じた

『シュュュ…』

 ゆっくりと格納庫を出て行くF-35戦闘機

 しかし、次の瞬間

「…!?」

 パイロットの自衛隊員は、思わず目を開く


 目の前に広がっていたのは、火の海と化す滑走路

『ヒュュュ…、ブフォンッ!

 ヒュュュ…、ブフォンッ!』

 空から、無数の焼夷弾が降り注いでいた

「一体、何が起こってる…?

 あんな過去の遺物など…

 …!?」

 次の瞬間、パイロットの自衛隊員は、慌てて上を見上げる

 そして

『ブフォンッ!!』

 F-35戦闘機に焼夷弾が落下し、爆発するのだった


《三沢飛行場、上空》

『ヒュュュ…

 ヒュュュ…

 ヒュュュ…』

 鷹や、鷲の超生類ちょうせいるいの足先に掴まれていた焼夷弾が、次々落とされていく

『ブフォンッ!

 ブフォンッ!

 ブフォンッ!!』

 焼夷弾は滑走路のみならず、格納庫も呑み込み、三沢飛行場全体が火の海に包まれるのだった


 その光景を上空から眺める鷹や、鷲の超生類ちょうせいるい

「良し…

 撤収する…!」

 一羽の鷲の超生類ちょうせいるいが、そう言うと

『バサッ…!』

 彼等は、どこかへ飛び去っていった


『パサッ…』

 焼け野原となった三沢飛行場

 格納庫は最早、焼け落ちていた

 その焼け野原を無言で見詰める、黒い制服姿の男性

 すると

「…陸曹長!」

 男性と同じ黒い制服を着た別の男性が、こちらへ歩んで来ながら、呼び掛けてくる

「そっちはどうだった…?」

 陸曹長と呼ばれた男性が聞く

「白神山地の方も焼け野原と化してました…

 同じく、焼夷弾が使用されたと思われます…」

 部下と思われる男性は、そう答えた

超生類ちょうせいるいという進化した存在なのに、焼夷弾という過去の遺物か…

 不釣り合いだな…」

 陸曹長と呼ばれた男性は言う

「彼等はどこで、そんな物を手に入れたんでしょうか…?」

 今度は、部下と思われる男性が聞く

「さあ、何処からだろうな…?

 我々は、彼等の事を知らな過ぎる…」

 陸曹長と呼ばれた男性は、そう答えた

 そして、陸曹長と呼ばれた男性は、その場を後にしようとする

「…陸曹長、どちらへ?」

 部下と思われる男性は問う

「事態が済んだ所に、長居しても仕方ない…

 我々の目的は、超生類ちょうせいるいを殲滅する事だからな…

 次の戦場に向かう…」

 佐藤陸曹長は、そう言い、颯爽と歩いて行くのだった

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