第20話 大地、燃ゆる

「ウオオオ…!!」

 とてつもなく、大きな雄叫びをげるツキノワグマの超生類ちょうせいるい

「…!?」

 辺りを見渡し、警戒する自衛隊員達

「何も起こらない…?」

「まだ、警戒を緩めるな…!」

 自衛隊員達は、そう呟く

 しかし、木々が風で揺れて、ざわめくだけで、何か起こる様子は無かった

「何も起こらない!

 ただの脅しだ!

 体勢を立て直せ!」

『ババババ!!』

 その言葉を機に、自動小銃を放ち、再び反撃する自衛隊員達


《原生林の外》

「今の雄叫びは何だ…!?」

 一人の自衛隊員が聞く

「分かりません!

 森の中から聞こえてきたとしか…」

 ある自衛隊員は答える

「考えても仕方ない…

 次弾の用意だ…!

 照準合わせ、次弾…

 撃て!!」

『ドゥンッ、ヒュュュ…!』

 そして、3発目の81式短距離地対空誘導弾が放たれるのだった


『ボオンッ!!』

 誘導弾が着弾し、爆発の煙に包まれる原生林

「こちらも続け!!」

『ボンッ!

 ボンッ!

 ドゥンッ!』

 81㎜迫撃砲と、120㎜迫撃砲で追撃する自衛隊員達

「図に乗るなよ、人間共…!

 ウオオオ!!」

『グシンッ

 グシンッ!

 グシンッ!!』

 ツキノワグマの超生類ちょうせいるいは、両腕を交互に横に振り切りながら、鉤爪で自衛隊員達を切り裂き、突き進んでいくのだった


《同時刻》

 少し離れた森林の上空

 緑豊かな自然と、済んだ青空が広がっているように見える

 だが、そんな時だった

 一つ、何かしらの影が空を飛ぶ

 ゆっくりと大きくなってくる空を飛ぶ影

 すると、次の瞬間、その影の後ろから新たな影が姿を現し、一つ、二つ、三つと増えていき、大きな群勢となって、こちらに向かって飛んでくる


『バサッ!

 バサッ!

 バサッ!』

 その集団は、鷹や、鷲の超生類ちょうせいるいの群れであった

 その鷹や、鷲の超生類ちょうせいるい達は、腕も無く、体長もそこまで大きくないが、胸から腹にかけて、更には、腿から脚にかけてが少し長くなっており、まるで人間のような姿をしていた

「我々が出る事になるとはな…」

 一羽の鷹の超生類ちょうせいるいが呟く

「彼等は覚悟を決めたという事だ…

 では、我々も覚悟を決めなければな…!」

 と一羽の鷲の超生類ちょうせいるいは言い、

「では、二手に分かれるぞ…!

 good luck…!」

 と続けて言うのだった

『バサンッ!

 バサンッ!

 バサンッ!』

 鷹と、鷲の超生類ちょうせいるい達は、両足に何かを掴んで、運んでいた


《原生林の中》

 自衛隊員達と、超生類ちょうせいるい達の戦いは、続いている

『ババババ!』

 自動小銃や、5.56㎜機関銃MINIMIを放つ自衛隊員達

 一方、超生類ちょうせいるい達は鉤爪で引き裂いたり、棍棒で殴り付け、自衛隊員達を倒していく


 しかし、そんな時であった

「…!」

 一頭のツキノワグマの超生類ちょうせいるいが、何かを感じ取る

「各位、散開!!」

 そのツキノワグマの超生類ちょうせいるいが、突然叫んだ

「何だ…?」

 突然の大声に、困惑する自衛隊員達


 すると、次の瞬間だった

『ブフォンッ!!』

 原生林が爆炎に包まれる

 更に

『ヒュュュ…、ブフォンッ!!

 ヒュュュ…、ブフォンッ!!

 ヒュュュ…、ブフォンッ!!』

 空から次々と、何か鉄の塊らしき物が降り注ぎ、原生林の至る所が爆炎に包まれるのだった


 激しく燃え上がる原生林

 原生林が、火の手に包まれる

 原生林の中、火の手によって、逃げ場を失う自衛隊員達

「一体、何が起こっている…!?」

「うあああ…!!」

 ある自衛隊員は混乱する

 更に違う自衛隊員は炎に呑み込まれ、身体が燃え上がるのだった


《原生林の外》

 81式短距離地対空誘導弾を放っていた自衛隊員達は、燃え上がる原生林を見詰めていた

「何事だ…!?」

 自衛隊員の一人が言う

「報告します…!

 原生林の上空に、鳥類型の超生類ちょうせいるいを確認…!

 その超生類ちょうせいるい達が、焼夷弾を落としている模様です…!」

 とある自衛隊員が報告する

「有り得ない…

 規制された産物だぞ…!

 どこから持ってきた…!?」

 ある自衛隊員はそう呟き、呆然とするしか無かった


《同時刻》

 燃え上がる原生林を少し離れた所で、見詰める超生類ちょうせいるい

「…」

 ツキノワグマの超生類ちょうせいるいも見詰めていた

『バサッ…

 スタッ…』

 そこに、鷲の超生類ちょうせいるいが、ツキノワグマの超生類ちょうせいるいの側の木に止まる

「これで良かったか…?」

 鷲の超生類ちょうせいるいが聞く

「君達には、済まない事をした…

 大事な森林を燃やす事になってしまって…」

 ツキノワグマの超生類ちょうせいるいは、そう答える

「だが、我々の存在意義を失うよりかは、良いとは思っている…」

 鷲の超生類ちょうせいるいは、そう言うのだった

「…ありがとう」

 ツキノワグマの超生類ちょうせいるいは、そう呟いた


《その日、多くの自衛隊員の命と、自然遺産にも登録される程の豊かな自然は炎上し、失われるのだった》

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る