第18話 森の王

《スウェーデン、北エリア》

 レンガ造りの建物が建ち並ぶ町並み

 一歩、街の外に出ると、豊かな森林等の広大な自然が広がる地域

 そんな自然に囲まれた街は、騒然としていた

『ガガガ…!』

 9040歩兵戦闘車が乗り付けて来るなり、乗り込んでいた兵士達が、一斉に降り出す

 そして、それと同時に

『ババババ!!』

 9040歩兵戦闘車は、機関砲を連射する

 また、降りてきた兵士達も

『ババババ…!』

 自動小銃を構え、放つのだった


 しかし、次の瞬間

『ヒュュュ…

 ボオンッ!!』

 ヒグマの超生類ちょうせいるいが勢いよく、9040歩兵戦闘車の前方部分に飛び掛かってくる

 その衝撃で車両が大きく揺れて、前方部分が沈む

 そして

『ガシンッ!!』

 ヒグマの超生類ちょうせいるいは右手を叩き付けて、9040歩兵戦闘車の機関砲の砲身をへし折るのだった


 あまりの動きの速さに、付いていけなかった兵士達は、慌てて自動小銃を構え直す

 しかし、次の瞬間

『ウォォォ!!』

 更なるヒグマの超生類ちょうせいるい達が、次々と襲ってくるのだった

 引き裂かれ、噛み付かれ、殴り倒される兵士達

「怯むな…!

 撃て…!

 撃て…!」

『ババババ…!!』

 後方に控えていた違う9040歩兵戦闘車や、兵士達は一斉に発砲、砲撃するのだった

 更に

『ガガガ…』

 戦車のレオパルト2の車両群が駆け付け、次の瞬間

『ドゥンッ!

 ドゥンッ!

 ドゥンッ!』

 到着するなり、砲撃する

『ボオンッ!

 ボオンッ!

 ボオンッ!』

 砲撃によって、街中が黒煙に包まれていく

 だが、次の瞬間、ヒグマの超生類ちょうせいるい達は、その黒煙をかき分けて尚、兵士達に迫り来るのだった


 戦車に襲い掛かるヒグマの超生類ちょうせいるい

 自動小銃で迎え撃つ兵士達

 ヒグマの超生類ちょうせいるい達と、兵士達が入り乱れ、戦場は混沌と化す

 すると、そんな時だった

『フサッ…

 フサッ…

 フサッ…』

 蹄を持った何かしらの超生類ちょうせいるいが、ゆっくりと近付いてくる


「この超生類ちょうせいるい共が…!」

 そう叫びながら、一人の兵士が銃口を超生類ちょうせいるいに向け、撃とうとした瞬間

『シュルシュル…

 バサッ!!』

 どこからか、木の枝が蔓のように伸びてきて、自動小銃に絡み付く

「!?」

 更に次の瞬間、違う木の枝が足元から絡み付いてきて、兵士の身体を締め上げる

 そして

『ブシュュュ!!』

 兵士の身体が締め上げられ、血潮が吹き出るのだった


『シュルシュル…』

 退いていく木の枝

 兵士達が、木の枝が退いていく方を見ると、その方向から姿を現したのは

『フサッ…

 フサッ…

 フサッ…』

 身長が250㎝、もしくは、300㎝はあるかと思われ、とてつもなく大きな角を携えたヘラジカの超生類ちょうせいるいであった

 そのヘラジカの超生類ちょうせいるいが歩いてきた所からは、草や花、木の芽が生え始めていた

 まるで、足跡を残すかのように…


「デカい…!?」

「あいつも、超生類ちょうせいるいか…!?」

 兵士達は呆気にとられ、呟くしかない

『ワサッ…』

 そして、立ち止まるヘラジカの超生類ちょうせいるい

「悲しいな…

 哀しいよ…

 私の後ろにどれだけ森を残そうとも…

 汝等、人間共が今一度、破壊するようでは…」

 ヘラジカの超生類ちょうせいるいは、そう言う


 すると、次の瞬間であった

『…スタッ』

 さっきまで戦闘をしていたヒグマの超生類ちょうせいるい達が一斉に、ヘラジカの超生類ちょうせいるいに対して向き、片膝を地面に付けた

「我ら、森の王よ…!」

 ヒグマの超生類ちょうせいるい達は、同時にそう言った

《系統:ヘラジカ♂

 称号:森の王

 名前:無し(称号こそが名前の代わり)》

「汝等は、下がっておけ…」

 ヘラジカの超生類ちょうせいるいは言う

 警戒して、自動小銃を構える兵士達

 だが

『タンッ…!』

 ヘラジカの超生類ちょうせいるいは、右脚のつま先を一回、地面に軽くタップした

 そして、次の瞬間であった

『バキバキ…!!』

 ヘラジカの超生類ちょうせいるいの足元の地面から、無数の木の枝が生えてきて、それが蔓のように伸び、波となって、兵士達に襲い掛かる

『バサバサ!

 バキバキ!

 グサグサ!!』

 ある木の枝は兵士達を押し倒し、ある木の枝は兵士達に絡み付き、締め上げ、また、ある木の枝は兵士達を突き刺して、襲い掛かるのだった

 無数の木の枝は、戦車や歩兵戦闘車にさえ絡み、呑み込む

 更にそれは広がり、街の一部さえも呑み込んでいく


『バサッ…!!』

 やがて、木の枝の動きが止まると、そこには、小さな林が出来ていて、その木々の先には、まるで、モズの“はやにえ”のように、兵士達が刺さっていた

「森林の再生こそが、この星の為なのだ…

 汝等のその犠牲、その血肉は、この星に届くだろう…」

 ヘラジカの超生類ちょうせいるいは、そう言うのだった


『…スタッ』

 再び、ヘラジカの超生類ちょうせいるいの前に並んで、片膝を地面に付けるヒグマの超生類ちょうせいるい

「森の王よ…

 次なるご指示を…!」

 一頭のヒグマの超生類ちょうせいるいが言う

「では、行こう…

 南下し、ヨーロッパ全土を取り返しに…!」

 とヘラジカの超生類ちょうせいるいは、力強く言うのだった


超生類ちょうせいるい達の侵攻は、日本のみならず、世界各国で激しさを増していた…》

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