第14話 新たな歯車

《中部防護壁内》

 荒土と化した街並み

 そんな街並みの中を、防護服を着た自衛隊員達が調査していた

 地面に付いた血液らしき液体を採取する自衛隊員

超生類ちょうせいるいの血液だと思うか…?」

 採取を見守る自衛隊員が聞く

「詳しく調べてみないと分からないですね…

 自衛隊員の血液かもしれないですし…」

 と採取する自衛隊員は答える

 すると、見守っていた自衛隊員は荒れた街並みを見渡し

「これだけの被害と犠牲を出して、超生類ちょうせいるいの肉片さえも回収出来ないとはな…

 忽然と現れ、忽然と姿を消す…

 超生類ちょうせいるいとは何なんだろうな…」

 とその自衛隊員は、呟くように言うのだった


『…バサッ

 …バサッ』

 そんな荒土と化した街並みを空を飛びながら、眺める一羽の鷹

 その鷹は、荒れた街並みを瞳に焼き付けるように、ゆっくりと瞬きをする

 そして、そんな街並みを一通り見た鷹は

『…バサッ

 …バサッ』

 そのまま、どこかへ飛び去るのだった


《東京、国会内》

 とある一室

 首相と、全大臣が集まっていた

「配備させたばかりのトマホークだぞ!

 いくら使ったと思う…!

 それをふんだんに使って、超生類ちょうせいるいの一頭も確保出来ないとは…!

 情けない…!!」

 財務大臣の男性が、声を荒らげて言う

「我々も、沢山の隊員の命を失ったんだ…!

 金の問題か…!!」

 防衛大臣の男性が反論する

「だが、中部防護壁の再建にも金は掛かる…!

 住民達の為にも、再建は急務だ…!」

 国交大臣の男性は言う

『どんな状況でも、男達は野蛮ね…』

 女性大臣の一人は無言で、そう思うのだった

 すると、次の瞬間

「ここで言い争って、どうする…!」

 と一人の男性が言う

「総理…」

「今回は退けたかもしれないが、超生類ちょうせいるいの脅威が去った訳では無い…!

 早急に立て直しを図る…!

 財務省と国交省は、再建に必要な予算の算定を急げ…!

 防衛省は、部隊の再編を急げ…!

 各位、今すぐ取り掛かれ…!」

 と総理大臣の男性は、強く言うのだった


《同時刻、日本のどこか》

 とある廃墟

「嫌…!

 来ないで…!」

 地面に尻餅を付いた状態で、後退りをする一人の若い女性

 その女性は、震えた声で言う

 目の前には、三人の男達が居た

「壁の中も安全じゃ無くなった今…!

 生きてる間に、遣りたい事遣って、楽しまないとな…!」

 若い女性を取り囲む男性の一人が言うのだった

 そして、その男性の手が、女性の胸ぐらの服を掴む

「嫌…!!

 離して…!」

 叫びながら、藻掻く若い女性

「ここは壁の外だ…!

 助けなんて、来ねぇよ!

 来るとしたら、超生類ちょうせいるい位だな…!」

 男性は半笑いで言い、次の瞬間

『ビリビリ…!』

 若い女性の服を引き裂くのだった

 女性の下着が露わになる

 ニヤける男達

 だが、次の瞬間であった

「クソだな…!」

「!?」

 背後から声を掛けられる

 男達が振り返ると、そこに居たのは、身長150㎝程度のフード付きの白いローブを着た謎の人物であった

「何だ、ガキか…?」

「どこのガキだ…?

 引っ込んでろ…!」

「ガキは、こんな所に居たらいけないな…!

 ガキは大人しく、壁の中に帰ってろ…!」

 と男達は、次々に言う

「引っ込むのは、お前達の方だ…

 クソ共…!」

 とその白いローブの人物は言い、次の瞬間、男達に駆け足で迫るのだった

「邪魔するのか、ガキが…!」

 男の一人が、その迫り来るローブの人物に殴り掛かろうとする

 しかし、次の瞬間、ローブの人物は姿勢を低くして、男の懐に入り込むと

『ズンッ!!』

 そこから勢いよく上に弾み、男の顎に、膝蹴りを食らわすのだった

 そして、そのまま、次は後ろ回し蹴りをして、もう一人の男性も蹴り飛ばす

「このガキが…!」

 残る一人の男が、ローブの人物を捕らえようと両腕で掴みに掛かる

 だが、次の瞬間、ローブの人物は、その掴みに掛かろうと来る男の頭頂部に手を付いて、男の背後に回り込み、それを躱すのだった

 すると、躱すその瞬間、ローブのフードが取れる

 フードが取れると、その下から姿を現したのは、シェパードの姿をした超生類ちょうせいるいであった

 そして、次の瞬間、そのシェパードの超生類ちょうせいるいは男の首元に噛み付き

『グサッ!』

 と噛み千切る

『ブシャャ…』

 吹き出る血飛沫

 残る最後の男も倒れるのだった

 すると、シェパードの超生類ちょうせいるいは、ゆっくりと女性の方へと振り向く

 シェパードの超生類ちょうせいるいの顔は返り血を浴びて、真っ赤に染まっていた

「…!」

 思わず、恐怖を感じる若い女性

 しかし、次の瞬間だった

 そのシェパードの超生類ちょうせいるいは、片膝を地面に付けて

『バサッ…』

 と着ていたローブを、その若い女性に羽織らす

「今すぐ壁の中に戻るんだ…

 男の血が付いてしまったが、これで戻れる筈だ…」

 シェパードの超生類ちょうせいるいは、そう言う

「貴方…

 私を殺さないの…?」

「今ここで、君一人を殺した所で何になる…?

 それに…

 こんなにも美しい女性を、私は殺したくない…」

 シェパードの超生類ちょうせいるいはそう言い、廃墟を出て行こうとする

「待って…!」

 呼び止める若い女性

 立ち止まるシェパードの超生類ちょうせいるい

めるんだ…

 ここが戦場では無いから、君を殺さないだけだ…

 戦場ならば、私は、君を躊躇なく殺す…!

 私は超生類ちょうせいるいなのだから…」

 シェパードの超生類ちょうせいるいは、女性の方をちゃんと向く事は無く、そう言い残して、その場を離れていくのだった


超生類ちょうせいるいとは、本当に何者なのか…


 そして、この出会いは、何を意味するのか…》

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