第10話 戦線

《中部防護壁》

 崩れた壁とゲート

『ウゥーン…!

 ウゥーン…!

 ウゥーン…!』

 街にサイレンが響き渡る

 そんな騒然とした街中で、数多くの自衛隊員を前に、背中の色が変わり、シルバーバックのゴリラとなるシャローラ

 シャローラの身体は熱を持ち、湯気が出ていた

 そして、シャローラはゆっくりと自衛隊員達を睨んだ


 すると、次の瞬間だった

 2台の軽装甲機動車が駆け付けくる

 そして、到着するなりそのまま、ルーフトップのハッチから5.56㎜機関銃を連射した

『ババババ!!』

 しかし

『シュゥ…

 シュゥ…

 シュゥ…』

 銃弾がシャローラに命中する直前に、熱気で溶けて、消えてしまうのだった

「何が起こってる…!?」

「クソが…!!」

 それでも機関銃を放ち続ける自衛隊員達

 すると、次の瞬間であった

『ドンッ!』

 左足を一歩前へと踏み出すシャローラ

 そして、そのまま、右拳を正拳突きするのだった

『ドゥン!!!』

 衝撃波と熱風が、自衛隊員達を呑み込む

『シュゥ…』

 立ち込める白煙と蒸気

 衝撃波が消えると、そこには、軽装甲機動車の足回りのタイヤ部分だけを残して、自衛隊員達は溶けて消えていた


『ババババ!!』

 小銃を連射する自衛隊員

 だが、その射撃を建物の壁を走り、躱すシャローラ

 そして、そのまま、自衛隊員との間合いを詰めると、右腕で、ラリアットを食らわし、自衛隊員を薙ぎ倒す

 しかし

『ババババ!!』

 空かさず別の自衛隊員が、小銃は放つ

 だが

『シュゥ…

 シュゥ…

 シュゥ…』

 やはり銃弾は、シャローラが放つ熱気で溶けてしまう

 すると、次の瞬間だった

『シュュュ…』

 目の前からシャローラの姿が消える

「!?」

《蜃気楼》

 そして、一瞬にして、自衛隊員の背後をシャローラは取る

『ボォン!!』

 すると、シャローラは左手で、その自衛隊員の後頭部を鷲掴みして、そのまま地面に叩き付けた


 だが、次の瞬間であった

『ヒュュ…

 ヒュュ…

 ヒュュ…』

 複数の誘導弾が、そんなシャローラに向かって、低空軌道で飛んでくる

『ボンッ!!』

 全ての誘導弾が、シャローラに命中して、辺りが爆炎と煙に包まれた

 そして、更には

『ボンッ!

 ボンッ!

 ボンッ!』

 迫撃砲が追い打ちを掛けるように、撃ち込まれる

「遣ったか…!?」

 自衛隊員の一人が言う

 だが、煙が晴れると、そこには無傷のシャローラが立っていた

 すると、次の瞬間、シャローラは天高く宙に飛び跳ね、強く握り締めた両拳を同時に地面へと叩き付ける

《鉄槌》

『ドオンッ!!!』

 蜘蛛の巣状にアスファルトが割れ、凹み、その衝撃に吹き飛ばされる迫撃砲兵の自衛隊員達

 そして

「ウォォォ!!!」

 シャローラは胸を張って、辺りに響き渡らせるように、雄叫びを上げるのだった


 だが、その時であった

『ドゥン!!』

 ライフル砲の砲身から砲弾が放たれる音が響く

『ボオンッ!!』

 シャローラが黒煙に包まれる

 砲弾が飛んできた方を見ると、そこにあったのは、16式機動戦闘車であった

「次弾、撃て…!」

 車長の自衛隊員が叫ぶ

『ドゥン!!』

『ボオンッ!!』

 黒煙が立ち込める所に撃ち込まれる砲弾

 しかし

「!?」

 車長の自衛隊員は驚いた

 黒煙が晴れてくると、そこに立つシャローラは未だ無傷に近かった

「効いてないか…!

 仕方ない、試しに徹甲弾に切り替える…!

 次弾装填、急げ…!」

 と車長の自衛隊員は言い、更に続けて

超生類ちょうせいるいとの距離には気を付けろ…!

 このままキープだ…

 場合によっては、スラローム射撃になる…!」

 と言うのだった


「図に乗るな、人間共…!」

 そして、シャローラは一気に間合いを詰めに掛かる

「クッ…!

 距離感を保て、後退…!!」

 車長の自衛隊員は言う

 砲塔をシャローラに向けたまま、バックで走行する16式機動戦闘車

 それを追い掛けるシャローラ

「次弾装填、撃て!!」

 車長の自衛隊員が叫ぶ

『ドゥン!!』

 走行したまま、放たれる砲弾

 すると、シャローラはその砲弾を右手の正拳突きで、弾こうとする

 しかし

「…!」

 迫り来る砲弾を、目を見開いて見詰めたシャローラ

 そして、次の瞬間、シャローラは右手を止めて、引くのだった

『シュンッ…!』

 砲弾は、シャローラの顔の横、肩口を抜けていく

『ボオン…!』

 砲弾は、シャローラの後方の道路に着弾する


「…!

 躱した…?

 徹甲弾は有効なのか…!?

 だが、あの一瞬で、徹甲弾を見分けたというのか…!」

 車長の自衛隊員は、言うのだった

 すると、次の瞬間

『ザザザ…!』

 シャローラは滑りながら、何故か立ち止まる

「…?」

 車長の自衛隊員は、疑問に思う

 しかし、その時であった

『ドオンッ!!』

 シャローラは地面に向かって、右拳を振り下ろした

 すると、次の瞬間

『ドゥンッ!!

 ドドドド!!』

 まず一つ、岩が隆起して、その後、その岩の隆起が連なっていき、バックで走る16式機動戦闘車を追い掛けていく


 そして、次の瞬間だった

『ガシンッ!!』

 岩の隆起が、16式機動戦闘車の底部から車体を貫く

 動きが止まる16式機動戦闘車

 すると、次の瞬間

『ボオンッ!!』

 16式機動戦闘車が爆発するのだった

 車体が炎に包まれる16式機動戦闘車

「…」

 右拳を振り下ろした姿勢のまま、その光景を見詰めるシャローラであった

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