第9話 王

 廃墟と化したとあるビル

 その中には、あらゆる動物の超生類ちょうせいるい達が、集まっていた

「今すぐ攻め込むべきだ…!」

 カンガルーの超生類ちょうせいるいが言う

「俺も同じ意見だ…!

 噂では、北海道や千葉でも侵攻が激化しているらしいからな…

 この混乱に便乗すべきだ!」

 ヒグマの超生類ちょうせいるいは、そう言うのだった

「確かに、お前達の意見も分かる…

 だが、考え無しに突っ込んだ所で、返り討ちに遭うだけだ…!」

 とバイソンの超生類ちょうせいるいは、諭した

「そうだ…

 それに、俺達には守らないといけない家族も居る…!」

 とライオンの超生類ちょうせいるいは、そう言うのだった

「だが、俺達の目的は、人間共からこの星を取り戻す事だろ…!!」

 とカンガルーの超生類ちょうせいるいは、強く言う

「…」

 その言葉に、思わず静かになってしまう他の超生類ちょうせいるい

 すると、そんな時であった

「それぞれ、思う事はあるだろう…

 しかし、仲間同士で争っても仕方ない…」

 とゴリラの超生類ちょうせいるいが暗がりから姿を現し、言うのだった

《タイプ:ゴリラ♂

 系統:ニシローランドゴリラ

 名前:シャローラ》


「だからといって、好機を逸する訳にもいかない…

 人間達の戦力が、各地の侵攻によって分散している今、我々も行動を起こす…!」

 とシャローラは言う

「シャローラ、お前がそう言うのなら…」

 ライオンの超生類ちょうせいるいはそう言い、納得するのだった

「だが、家族を見捨てる事も出来ない…

 幸いな事に、我々には強力な戦力が集まっている…!

 だから、戦力を分ける…!」

 シャローラはそう言う

 そして、超生類ちょうせいるい達は、シャローラの話を聞き入るのだった


《中部防護壁》

 愛知県名古屋市を中心に、愛知の一部、三重の一部、岐阜の一部を超生類ちょうせいるいの侵攻から守る巨大な壁

 その壁の内側へと入る為のゲートの一つ

「…?」

 そのゲートの警備に当たる自衛隊員の一人が、目を細めて遥か先の道路を見詰め

「どうかしたか…?」

 同じく、ゲートの警備に当たる隣の自衛隊員が聞く

「いや…」

 とその自衛隊員は答えたのだが、次の瞬間だった

 道路の向こう側から、何かが姿を現してくる

 ゆっくりと姿を現してきたのは、象の超生類ちょうせいるいであった

『ドシ…

 ドシ…

 ドシ…』

 そして

『ドシッ、ドシッ、ドシッ…

 ドシドシドシドシ…!!』

 象の超生類ちょうせいるいは、歩くスピードを速めてくる

「!?

 ゲートを閉めろ!!」

 自衛隊員は叫んだ

 しかし

『ドシドシドシドシ!!』

『ボオンッ!!!』

 象の超生類ちょうせいるいは、物凄いスピードで突進して、壁の一部諸共、ゲートを破壊するのだった


「パオォォォ!!」

 象の超生類ちょうせいるいの雄叫びが響き渡る

 その衝撃に、怯む自衛隊員達

 すると、次の瞬間

『バシンッ!!』

 象の超生類ちょうせいるいは、そんな怯む自衛隊員達に鼻を振り回して、吹き飛ばすのだった

 そして、象の超生類ちょうせいるいの後ろから、次々と色々な動物の超生類ちょうせいるい達が入ってくる

「さあ、行くぞ…!!」

 一番最後に入ってきたシャローラが言う


『ババババ!!』

 自動小銃を連射する自衛隊員達

 しかし

『ドドドド…!』

 銃弾を弾きながら突進してくるインドサイの超生類ちょうせいるい

『ドゥンッ!!』

 そのまま突っ込み、自衛隊員達を吹き飛ばす

「フッ…」

 そのインドサイの超生類ちょうせいるいは、倒れた自衛隊員達を見下ろした


『ブウゥゥン!!』

 長い首を鞭のようにしならせながら振り回し、自衛隊員達を薙ぎ倒していくキリンの超生類ちょうせいるい

 だが、次の瞬間だった

『ボオンッ!!』

 キリンの超生類ちょうせいるいの頭部に、対戦車用の誘導弾が命中する

 しかし、顔を振って、煙と埃を払うキリンの超生類ちょうせいるい

 キリンの超生類ちょうせいるいの顔は、無傷であった

 そして

『ブウゥゥン!!』

 キリンの超生類ちょうせいるいは、再び首を振り回して、その誘導弾を放った自衛隊員を薙ぎ倒すのだった


「撃て!

 撃て!

 撃て!!」

『ババババ!!』

 そう叫びながら、自衛隊員は自動小銃を放つ

 しかし、シャローラはゆっくりと、こちらへと迫ってくる

 銃弾は命中しているものの、効いている様子が無い

 そして、次の瞬間

『ガシッ…!』

 シャローラは右手で、自衛隊員の顔を覆うように掴み、そのまま宙に持ち上げる

 ゆっくりと、こめかみ部分を締め上げるシャローラ

「アアア…!」

 自衛隊員は、シャローラの手首を掴んで藻掻く

 だが

『ブシュゥゥ!!』

 自衛隊員の顔面は握り潰されるのだった

『シャャャ…』

 握り潰した自衛隊員の鮮血が降り注ぐ

 すると、その瞬間

『シュュュ…』

 シャローラの背中の色が変化していくのだった

 黒色が抜けていき、どんどんとシルバーへと変化していく


《王の誕生である…》

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る