第3話 問い
《
その為政府も、都市部を中心に防御壁等の防衛ラインを引き、自衛隊等の武力部隊を展開していた
また、一部の家畜や飼育動物を除き、数多くの動物達は殺処分された
一方で、監視体制がとられなかった動物達、特に野生動物達は野放しに近い状態となっていた》
《奈良県内》
自衛隊の軽装甲機動車を先頭に、人員輸送用の3トン半トラックが連なって、移動していた
その3トン半トラックの車内には、キッチリと装備をした自衛隊員達が居た
「これは訓練では無い…
実戦、しかも市街地戦だ…
何処から敵が襲ってくるか分からない
警戒は怠るな…!」
隊長らしき自衛隊員が言う
「本当に
ある自衛隊員が尋ねる
「それを調べに行くんだ…
神の使いが故に、監視体制も、殺処分も出来なかった奈良公園周辺の鹿達を…」
隊長らしき自衛隊員は言う
「神の使い…
それじゃあ、
と尋ねた自衛隊員が、ボソッと呟く
自衛隊の車列が、奈良公園近くに到着するのだった
車両から次々降りてくる自衛隊員達
「静かだな…」
一人の自衛隊員が言う
人の姿が無いのは当たり前だが、鹿の姿も無く、静寂に包まれていた
「よし、これより分かれて、捜索に入る…!」
隊長らしき自衛隊員が言う
そして、自衛隊員達は複数の班に分かれて、散っていくのだった
5人一組で行動する自衛隊員達
奈良公園内を見渡しながら、進んでいた
「全然居ませんね…」
《名前:岸本
階級:陸士長》
「だからといって、油断するなよ…!
特に嶺井、里田
お前達、2人はな…」
《名前:
階級:1等陸曹》
「了解しました…!」
《名前:嶺井謙
階級:2等陸士》
《名前:里田恭介
階級:2等陸士》
すると、そんな時であった
『パキンッ…!』
枝を踏み付け、折れる音がした
『…!?』
慌てて、一人の自衛隊員が音のした方を振り向く
《名前:佐藤
階級:1等陸士》
そこに居たのは、立派な角を携えた雄の鹿であった
「…鹿!」
佐藤が呟く
「待て!
まだ分からない…!!」
菊田は言う
向かい合う一頭の鹿と、自衛隊員達
そして、次の瞬間だった
「とうとう来てしまったか…
人間共…」
と目の前の鹿が言葉を発し、ゆっくりと上体を起こし始める
『!?』
銃を構える自衛隊員達
「撃てるか…?
神の使いを…」
《タイプ:ニホンジカ♂
縄張り:奈良公園一帯
名前:無し》
地面を踏み締める鹿の足、次の瞬間
『バッ…!』
一気に突進してくる
「撃て!!」
『ババババッ!!』
菊田が合図し、自衛隊員達は銃を放つ
しかし、銃弾を躱しながら、更に間合いを詰める鹿
そして
『バンッ!
ボオンッ!!』
嶺井を殴り飛ばし、里田は腹部に回し蹴りを食らわして、蹴り飛ばす
「嶺井!!
里田!!」
叫ぶ菊田
「…くっ!」
慌てて、銃口を構え直す岸田
だが
「遅い…!!」
鹿は蹄の手で、岸田の顔面を鷲掴みし、そのまま後方へと地面に叩きつける
『グシッ!!』
『…ドサッ』
叩きつけられた衝撃で、潰れて血だらけになった岸田の顔面から手を離す鹿
思わず恐怖する菊田
そして、次の瞬間
「ウォァァ…!!」
菊田は悲鳴に近い叫び声を上げながら、勢いよく拳銃を取り出し、構えるのだった
しかし
『グサッ…!!』
鋭く立派な角が菊田の身体に突き刺さり、宙へと突き上げられる
「…ッ!」
血を吐く菊田
鹿は頭を振り払い、菊田を地面に投げ捨てるのだった
「残りはお前だけだな…」
と鹿は言う
「…!」
佐藤はサバイバルナイフを取り出し、構えるのだった
「驚いた…!
この惨劇を見ても、まだ諦めてないんだな…」
鹿はそう言う
「例え此処で死ぬ事になっても…
お前達、
「では、そんな貴様に、1つ問おう…」
「…?」
「貴様ら人間は何人だ…?
高度な進化をし、高い知能、言葉というツール、手先の器用さ、圧倒的な人口…
これら持ち合わせ、地球人を名乗っておきながら…
貴様ら人間は、その責任を果たしているのか…?」
「どういう意味だ…?」
「都合のいい時だけ、地球人を名乗り、この星を好き勝手に荒らし…
都合が悪くなれば、この星を捨てようとする…
そんな人間達の存在意義とは何かと聞いているのだ…?」
「…」
無言になる佐藤
「貴様らが地球人を名乗るのなら…
この地球の事を考えた行動をするのが、貴様ら人間の存在意義で、貴様ら人間のノブリス・オブリージュでは無いのか…?」
「果たすべき責任…」
佐藤は呟く
「まあ、貴様一人がどうこうした所で、残りの70億人が変わらなければ意味ないのだが…」
と鹿は言い、近くに落ちていた木を拾い上げる
「器用に掴むんだな…」
「
諦めていない貴様に、こちらも正々堂々と応えようではないか…!」
と鹿は言い、木を刀のように構えた
向かい合う二人
そして、次の瞬間、同時に間合いを詰めるのだった
《
もしくは、神々のただのお遊びか…》
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