第2話 接敵
《日本、九州地方》
とある畜産農場
「何故…
何故、こんな酷い事をしなくてはならないんだ…」
地面に両膝を付いて、泣き崩れる畜産農家の男性
男性の目の前には、電気ショックで眠らされた多数の牛達が居たのだった
そして、防護服に身を包んだ人達が、その眠った牛達の首を切り落としていた
「お辛いと思いますが、理解して下さい…
家畜であっても、いつ
作業を見守っていた自衛隊員が、畜産農家の男性の横で言うのだった
《同時刻》
畜産農場を遠目から望む場所
フード付きのローブに身を包んだ数人の人影があった
彼らはそこから、シートに包まれ、土に埋められていく家畜達を眺めていた
「済まない同胞達よ…
お前達は何も悪くない…
ただ、家畜として生まれてきてしまっただけ…
ただそれだけなんだ…
…さあ行くぞ!
同胞達を救いに…!」
人影の一人が言うのだった
畜産農場では引き続き、家畜達の首を落とす作業が進められていた
すると、次の瞬間
『ボンッ!!』
農場の屋根が崩れ落ち、辺りが白煙に包まれる
「何が起こった…!?」
自衛隊員の一人が叫ぶ
「…?」
自衛隊員が薄れていく白煙の方を見ると、人影が微かに見え始めていた
白煙の中から姿を現したのは、フード付きのローブの人物であった
そして、その人物はいきなりフードを取り
「よくも同胞達を…!
彼らが何をしたという…?
人間共に家畜として、産み落とされただけだというのに…!」
と叫んだ
フードの下から姿を現したのは、黒毛に覆われた馬の
《タイプ:馬♂
系統:サラブレッド
肩書き:元競走馬
名前:ウイングノワール》
「総員、構え!!」
警備に付いていた自衛隊員達が、一斉に銃を構える
「撃て!!」
隊長の合図と共に、一斉射撃が始まるのだった
『ババババッ!!!』
しかし、一気に自衛隊員の方へと、間合いを詰めてくるウイングノワール
ウイングノワールの動きに追い付けず、地面に着弾する銃弾
「人間如きの兵器で、俺のスピードに付いてこれると思うな…!!」
そして、間合いを詰めたウイングノワールは、その勢いのまま中段蹴りを自衛隊員の一人に食らわす
『ボオンッ!!』
後ろへと勢いよく飛ばされる自衛隊員
そのまま、壁に叩きつけられるのだった
一方、農場の外も
『ババババッ!』
銃を連射する複数人の自衛隊員
しかし、次の瞬間
『バサッ!!!』
長さ4~5メートル以上はあるとても太い大木が、自衛隊員達を薙ぎ払う
『バサバサ…』
地面に払い落とされる自衛隊員達
「弱いな、人間共!」
大木を肩に担いだカバの
《タイプ:カバ♂
前所属:九州の動物園
名前:ポポ》
「覚悟しろよ、人間共!!」
カバの
無数に転がる自衛隊員の遺体
そんな中で、武器に使っていた大木を地面に寝かし、その上に腰を下ろすポポ
「そっちも終わったか…?」
建物から出てきたウイングノワールが話し掛ける
「ああ…
それより電気で眠らされてる同胞達はどうする…?」
まだ首を落とされず、ただ電気ショックで眠らされてる家畜達
「このまま置いていく…
彼らは同胞であっても、まだ
それに彼らはもう自由だ…
目覚めてから何処に行こうと彼らの勝手だ…」
「じゃあ、死した者達はどうする…?
彼らも置いていくのか…?」
「…」
無言になるウイングノワール
「俺達、草食系の
肉食系の
とポポは言うのだった
「では、死した者達だけは連れて帰ろう…
それが、彼らへの弔いにもなるだろう…」
「じゃあ、帰るか…
仲間達のもとへと…」
そう言って、ポポはゆっくりと腰を上げる
「全員、撤収する…!」
ウイングノワールは振り返り、仲間達に向かって強く言うのだった
《-報告書-
九州地方にて、
また、作業に立ち会っていた農場関係者12名の死亡も確認
計62名の死亡を確認も襲撃者は不明
家畜の
※1
・家畜及び飼育動物の扱いについて
24時間監視体制をとる事
監視体制をとれない場合、直ちに家畜及び飼育動物を殺処分する事
これは、一般家庭におけるペットも含む》
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