ノブリス・オブリージュ

甘味

第1話 発現

《アフリカのとある国》

 暗闇に包まれた夜のサバンナ

『ドドドドド…バサバサ…!』

 草木を薙ぎ倒しながら、そのサバンナを駆け抜ける一頭のサイ

 すると、次の瞬間であった

『バシンッ!!』

 ワイヤートラップに後ろ足が捕まる

「ウォォォ…!!」

 叫び声を上げながら、暴れるサイ


「手間を取らせやがって…!」

 草木から銃を装備した男達が、ぞろぞろと出て来る

「バレるだろ!黙ってろ!」

『パンッ!』

 そう言って、男の一人が麻酔銃を撃つのだった

「早く角を落とせ…!」

「傷付けるなよ…!」

「価値が落ちる…!」

 男達のそんな会話が交わされる中、意識が薄れていくサイ

 サイの潤んだ瞳

 天を見上げるサイの瞳に映っていたのは、輝く満天の星と、無数に降る流れ星であった


『願わくば…』


《現在》

 国連本部の会議場

 各国の首脳達も参加する会議が開かれていた

「このままでは、地球は限界を迎えます…!」

「兵器開発は新たな戦争を生むだけです…!」

 各国の首脳達は、それぞれの意見を主張する

 そんなあらゆる意見が交錯する中であった

『ボンッ!!』

 会議場内で爆発が起き、白煙に包まれる


「何が起きた…!!」

「何事だ!?」

「キャー!!」

 騒然とする会議場

 そして、立ちこめる白煙がゆっくりと晴れていく

 そこに姿を現したのは、フード付きの白いローブに身を包んだ無数の侵入者達であった

「よく聞け、人間共…!

 今現時刻をもって、この国連は我々が支配した…!」

 壇上に立つ人物が言う


「貴様らが幾ら議論しようと、この地球は救われない…

 貴様ら人間共は何も理解していないからだ…!

 貴様らはただ知能が高くて、数が多いだけの一種族に過ぎないのに…

 貴様らは、ただ進化の過程で生まれた存在に過ぎないのに…

 それなのに、あたかもこの星は自分達の星だと思い込み…

 しかし、この星が限界に近付くと、この星を捨てようとしている…!

 貴様らはそれで良いのかもしれない…

 だが、我々は違う…!」

 壇上に立つ人物はそう言い、フードを取るのだった

 フードの下から姿を現したのは、動物のライオンそのものの姿であった

 ライオンが二足で立ち、人間の言葉を喋っていた


「宇宙を駆ける術を持たない…

 我々にとっては、この星だけが母星なのだ…!

 貴様ら人間共こそ宇宙人なのだ!!

 だから我々はこの星を取り戻す為に、進化を望んだ…

 人間共を超える進化を…!

 そして、我々は生物の域を超え、超えた存在となった…!

 今此処に宣言する…!

 我々は超生類ちょうせいるいであると!!」

 と壇上のライオンのような超生類ちょうせいるいは、高らかに叫ぶのだった


「今こそ立ち上がれ、同胞達よ!

 戦いの火蓋は切って落とされた!

 取り替えそうではないか!

 地球を!

 我々の母星を!!」

 壇上のライオンのような超生類ちょうせいるいは拳を掲げながら、そう言うと

『ウオオオ!!!』

 会議場に侵入していた他の超生類ちょうせいるい達が、一斉に吠える

 オオカミのような超生類ちょうせいるいは遠吠えをするように

 また、クマのような超生類ちょうせいるいは雄叫びをあげて

 更に、ゴリラのような超生類ちょうせいるいは胸を叩き、ドラミングをしながら叫ぶ


《その日、国連本部は機能を失った…

 そして、その日を境に始まるのだった…

 第三次世界大戦が…

 長い長い、人間達と生物を超えた存在、超生類ちょうせいるい達との戦いが…》

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る