2:ルナテミスの主人(3)
倉庫に向かう廊下もまた普通の廊下然としており、並んでいる扉にはいちいちプレートが付いている。
それぞれのプレートには奇妙な名称が付いていたが、他人の家の中をいちいち覗くのもどうかと思ったので、ファルサーは廊下を進んで、それらの扉の前は素通りした。
廊下の一番奥に、アークの言った通りの扉があった。
どうやらここが目的の
だが扉を開けると、そこにはまたしても、ファルサーの想像を裏切る光景が広がっていた。
天井は遥かに高く、向こうの壁はよく見えないほど遠い、広大な部屋だったからだ。
そこに理路整然と等間隔に、天井まで届く石で作られた棚がビッシリと並んでいる。
それぞれの棚は高さや広さが異なるが、全てにプレートが貼られていて、その名称に見合った物が収められているらしい。
しばらく呆然と
入り口に戻って見ると、扉の脇に木製の棚とボードが設えられていて、その
ボードを手に取って見ると、そこには「
ファルサーは、アークは自分を島に渡してくれる気など毛頭無いのではないかと思った。
意味も判らない単語の羅列を眺めて、どうしてリストの物を集める事など出来ようか?
アークが手の中で弄んでいた水晶球の事など思い返すと、自分はからかわれているとしか思えない。
しかし金銭に興味は無いとハッキリ言われてしまっているし、そもそもアークが言う通り自分の手持ちの
最初にこの路銀を渡された時、ファルサーには金銭感覚が無かったので良く解っていなかったが、旅に出て直ぐ、その
アークはこの
しばらくリストを眺めてから、仕方がないので頭を下げて、アークにこのリストが何を指示しているのか訊ねようかと考えた。
だが、アークのあの高慢で人を喰ったような態度を思い出すと、頭を下げて訊ねる気持ちが急速に萎む。
そもそもアークが「暇を持て余している」と言った事も、ファルサーの心に引っかかっていた。
自分にとっては命に関わる重大事なのに、あんな応対をされて、その上に頭まで下げるのか。
色々な迷いをどう取捨選択しようかと途方に暮れつつ悩んでいると、ふと、棚のプレートにリストに書かれた名称と同じ物がある事に気付いた。
馬鹿げて広い部屋だが、棚の名称はアルファベット順に並んでいるようだ。
棚に書かれた名称で同じ物を探せば、アークに教えを乞う必要は無いのではないか?
ファルサーは、まずはストックの中での名称探しから始めた。
そうして端から虱潰しに探してみると、リストと合致するプレートを全部見つける事が出来た。
棚に収集されている物は植物が多く、鉱石も混ざっているようだ。
ファルサーはリストと見合わせたプレートの棚から、見本になりそうな品をいくつかピックアップして袋に入れ、それから洞窟の外に出て、山の中を歩き回った。
見本にした植物はほとんどが乾燥されていたので、最初の頃は区別がつかなかったが、何種類もの植物を集めているうちに、だんだん見分けが付くようになった。
更に集めていくうちに、リストの植物は季節的に収穫時期の物ばかりである事にも気付く。
どうやらアークはファルサーに難問をふっかけてきたのではなく、自分で収穫に行くつもりだったが丁度ファルサーが現れたので、仕事を頼んだようだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます