第2話 錯誤するあほ

山野たけしはとても気になっていることがあった。気になっていることを誰にも悟られないように必死だった。そして悟られないために平然を装うことに必死だった。そしてそのことを悟られた時にどんな顔をするかに四六時中悩まされていた。


気になっていること・・・


それは簡単に説明できる内容ではなかった。というよりたけしの言語能力では簡単に説明できなかった。


それはたけしの永遠のテーマ「殺人とは」である。


「なあ、ゆうじろう。」


「なんだ、まめじろう。」


「誰がまめじろうだ。」


「なんだよ?」


「人が人を殺す時にな、殺される人も殺す人も、殺す凶器も殺し方も全く同じだったらどうなるんだ?」


「同じだったらってどういう意味だよ?」


「誰がまめじろうだばかやろう。」


「お前は顔がまめなんだよ。」


「お前は顔が青竹踏み(ぶつぶつ)なんだよ!」


「いやね、例えばAがBをCでDして殺した、としよう。その場合でもしA=B=C=Dだったらどうなる?」


「まあ、それでいけば、【たけし】だったとしたら、たけしが、たけしを、たけしで、たけしして殺した。ってことになるな。」


「なるだろ?。おかしいだろ~?。ほかにも、【冷凍マグロ急速解凍中の男】でいくと・・・」


「いやいや待て待て!その、Dのたけしして殺してってなんだよ」


「そう思うだろ?お前の小さな脳みそでもそう思うぐらいなんだから、俺の小さなおみそでもそう思うはずなんだよ。」


「何と何を比較して、どういう結論にいたってるんだそれ。」


「つまりそれはやってみないと分からないってことだろうな」


「何事も経験というわけか・・・じゃあお前試してみたらいいんじゃないか?」


「というかもうやったんだよ。」


「えっ!?」


「ここが殺人現場だぁああぁぁああ!!」


「おおぉぉぉおおおお!!!B級サスペンスホラーみたいな感じいいいぃぃぃ!!!!」



実はこの空想上の殺人現場にはもう一人の男がいた。

そんなじゃれ合いを微笑ましくみつめている男が。


彼の名はこうたろう。


別名 ゆうじろう



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