この闇魔法を、どう思いますか?「もう、やめたい。転職、したいんですけど~」

冒険者たちのぽかぽか酒場

第1話 あの人たちって、こういう人に似ている。 「冒険をはじめたら、もう、がんばれません!がまんできません!転職したい!」

新社会人の、闇魔法。

「入社した会社、もうやめたいんですけれど。転職したいんですけれど」

そう言っては、退職代行サービスの業者に泣きつく人たちが痛い。

「だって、話がちがうから」

生まれてからずっと、何もかもが自分たちの期待通りにいくんだと、かんちがいしていませんか?

中学生や高校生も、がっかりだろうな。

「あれが、大人なのか」

「過保護病?」

「悲しい」

「打たれ弱いんだね」

「俺たちも、将来、ああなっちゃうかな?」

ああ、闇魔法。

今どきの新社会人って、こんな人に似ている。

「冒険をはじめたら、すぐに転職したいと言いだす異世界なやつ」

異世界といえば、異世界に住む友だちと知り合い、こう言われたっけ。

「なあ、レノン?もう、お互い中学生だ。TVでもネットでも良いから、これまで以上にニュース番組を見たほうが良いみたいだぞ?レノンも俺も、いつかはあの新社会人になってしまうんだから」

「レノン」は、この春に中学3年生となった、新社会人について考えさせられている彼の名前。 日本男子。

「へえ。いつかはあの新社会人になってしまうって、だれが言っていたんだ?」

「魔法道場の先生」

「きびしいね」

でも…。

きびしいかもしれないけれど、新社会人っていう人たちをしっかり面倒見てくれそうじゃないか。

「努力する力がないから、何もしていないのにすぐ弱音を吐く。退職したい」

そこを、何とかしてもらえるんじゃないか?

他人思いの彼は、異世界の友だちに願いごとをする。

「そうだ」

「どうした、レノン?」

「あの新社会人たちを、そっちの道場できたえてあげられるかな?」

でもねえ…。

その願いは、闇魔法となってしまった。

異世界の地上では、悪魔族が人間の姿をして町をうろついている。

空では、炎を吐くドラゴンたちが飛ぶ。

海では、3つ目の大王イカが冒険者たちの命を狙っている。

「あ!遠くに、ネコがいるぞ!かわいいなー」

で、近付けば、体長3メートルのデカニャンコだったりさ。

そんな恐ろしい異世界に、あの新社会人を送れば、どうなる?

「…もう、やめたい。転職したい」

結局、それかー!

「俺は、転職より転生がしたいぜ」

じゃあ、1回死ぬんだね?


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