第2話 波間の教訓

成功の余韻に浸りながらも、ケンジは次の挑戦に向けてさらに学びを深めることに集中した。ハルオさんの下での修行は続き、彼は毎日、夜明けとともに海に出る日々を送っていた。


「イカの動きは、海の気まぐれによって変わる。お前も海を読むことを覚えなければならんよ」とハルオさんは言う。ケンジはその言葉を肝に銘じ、海の色、風の方向、潮の流れを観察し始める。これらすべてが、イカの居場所や行動に影響を与えると教わったからだ。


ある日、海上で強い風が吹き始め、波が高くなるという予報が出た。ハルオさんはケンジに、このような日には特に注意深く海を読む必要があると警告した。


「今日は、海が我々に何を教えてくれるかな?」ハルオさんは意味深に言い、船を操り始めた。


風と波が強まる中、ケンジは海の変化を敏感に感じ取りながら釣りを続けた。数時間が過ぎ、やっとのことで一匹のイカが釣れたが、海の状況は一段と厳しくなるばかりだった。


「帰ろう、ケンジ。今日はこれ以上のリスクは無用だ」とハルオさんが判断し、二人は早めに撤退を決めた。船に戻る途中、ハルオさんはケンジに海と向き合う際の重要な教訓を説いた。


「海は与えてくれるが、同時に奪うこともある。すべてをコントロール下に置くことはできん。だからこそ、謙虚でいなければならん。」


その日の経験はケンジにとって大きな学びとなり、自然の力と尊敬、そしてそれに対する謙虚な姿勢の重要性を理解することに役立った。彼はハルオさんの言葉を胸に刻み、次第に自分だけの海の読み方を確立していくことになる。そして、その学びが将来、ケンジを一人前のヤエン釣り師へと成長させるための礎となっていくのだった。

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