第22話 8月1日夜

 姫乃も合流し、5人で勉強会を行う。夕食はネットで宅配を頼み、それぞれで食べた。その後も俺の部屋で勉強会を続けた。


「もう9時だけど、まだやるの?」


 姫乃がみんなに聞いた。おそらく告白を待つ姫乃は帰ろうとしないし、そうなると永井と福原、内田さんも帰れない。


「そろそろ帰ろうか。ね、姫乃ちゃん」


 福原が言う。


「私は家が近所だから大丈夫。みんなは帰ったら?」


 姫乃が返す。


「うーん、もうちょっと居ようかな」


 戦いは持久戦に持ち込まれ、どこまでも居る覚悟のある姫乃に対し、俺たちは追い込まれつつあった。


 そんなとき、第三の勢力が現れた。


「圭、あんたたち何してるの?」


 部屋の扉が開き、そこに現れたのは姉の佐原香織だった。


「姉貴こそなんで家に居るんだよ」


「あー、飲み会の後、家に帰るの面倒なんでここで寝ようかと思って」


「酔っ払いかよ」


 かなり面倒だな。


「で、これは何?」


「見て分かるだろ、勉強会だよ」


「もう夜も遅いよ? いつまでやるの」


「……そうだよな。じゃあ、みんな今日は終わろうか」


 俺はみんなに言った。


「私はまだ居るから。みんなは帰って」


 相変わらず姫乃はそう主張した。


「いや、でもそれじゃあ……」


 福原が抵抗を試みる。だが、それを見た香織が言った。


「ふーん、いいお友達ね。分かった。私があなたたちの代わりにこの部屋に居るから」


「「はあ?」」


 俺と姫乃は驚いて言った。


「あ、そういうことですか、分かりました。じゃあ、帰ろうか」


 福原はあっさりと香織の言うことを認め、永井と内田さんにも帰るように促した。


(いいのかよ、作戦は)


(後はお姉さんに任せて大丈夫だと思う)


 永井と福原は小声で話した後、内田さんとともに部屋を出て行った。


「さて、私は独りで二次会やろうっと」


 香織はいったん部屋を出て冷蔵庫から缶ビールを持ってくる。そしてスマホを見ながら飲み出した。


「あの……香織さん。なんでこの部屋に?」


 姫乃が聞く。


「ん? あー、気にしないで」


 香織は何も説明しない。あいつらの代わりに居ることで告白できない雰囲気にしようということだろう。


 結局俺たちは勉強を続けるほかは無かった。時間は過ぎていく。もう11時をまわった。あと1時間で8月1日は終わる。俺は告白をしない1日をついに迎えるのだ。

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