第21話 8月1日
夏休みになり、あっという間に8月1日になった。今日こそ姫乃に告白しない日だ。
朝から永井と福原がうちに来た。うちの親はたまたま親戚の家に泊まりに行っていて今日は不在。俺しか居ないから都合が良かった。
内田さんは彼氏とデートした後、夕方から来るそうだ。ちなみに姫乃からの連絡は何も無い。俺からも今日は連絡を取っていなかった。
お昼はピザを頼んだ。そして、昼からも宿題を進める。夕方近くになって、内田さんがやってきた。
「真理ちゃん、デートお疲れ様。楽しかった?」
福原が聞く。
「楽しかったけど、ちょっと疲れたかな」
「そっか。いいなあ。私もデート行きたい」
「作戦が終わったらな」
永井が言う。
「そうだね。今日は作戦に集中しなくちゃ」
「うむ」
「作戦に集中って宿題やってるだけだろ」
俺が突っ込む。
「だって――」
福原が何か言いかけたときだった。インターフォンが鳴る。
「敵襲か?」
永井が言った。
「姫乃ちゃんかもね。その場合、どうする?」
「別に入れていいだろう。告白する雰囲気じゃ無ければ問題ないから」
「そうね」
俺はその会話を聞きながら玄関に行く。ドアを開けるとやはり姫乃だった。
「どうした?」
「今、内田さんが入っていかなかった?」
ドアが開くなり内田さんのことを姫乃が聞いてきた。
「え?」
「とぼけないで。内田さん、来てるでしょ」
姫乃は明らかに怒っている。
「うん、居るよ」
「はあ? 内田さん、家に連れ込んでるの?」
姫乃はかなりお怒りモードだ。
そこに内田さんが出てきた。
「二宮さん、お邪魔してます」
「……なんで、ここにあなたが居るのかしら」
姫乃の怒りが頂点に達しそうなので種明かしすることにした。
「もういいから、永井と福原も出てこいよ」
「……なんだよ、もう少し引っ張りたかったのに」
「姫乃ちゃん、ごめんね。みんなで勉強会してただけだよ」
「あれ? 永井君に里美ちゃんも居たの?」
「そうだよ。内田さんは今、合流したばっかり。みんなで夏休みの宿題をしてるところだよ」
「なんだ、そうだったのね……って、なんで私も誘わないの?」
「姫乃はこんなに早く宿題やらないだろ」
姫乃は宿題は最後までやらないタイプだ。いつも夏休みが終わる寸前にまとめてやっている。
「私だってやるわよ、まったく。ちょっと待ってなさい」
姫乃は勉強道具を取りに家に戻った。
「はぁ、恐かった」
内田さんが言う。
「ごめんごめん、内田さんが一人で入っていったから誤解しちゃったね」
「でも、やっぱり二宮さん来たね」
「うん……」
この後どうなるんだろう。俺には不安しか無かった。
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