第21話 巡査部長に昇進

あれから二年が過ぎた。結局俺は吉田さんと似たような経験をした事になる。俺は黙々と机に向かって事務職に没頭した。その間に昇進試験を受け、巡査部長に昇進した。更に出来れば最終目標である警部まで上りつめたいと思っている。良い事は続くようで、吉田さんに三人目の孫が生まれたから遊びに来いと吉田さんから連絡を受けた。吉田さんは後遺症もなく無事に定年退職していた。ある日の事、吉田さんに誘いを受けて昇進祝をしてくれると言う。

吉田さんには二人の娘が居て二人とも子供がいるが、嫁いで行ったので家族は奥さんと二人だけだという。


「お前には本当に助けられたよ。そのせいで辛い思いをさせて申し訳ない」

 吉田さんは事あるごとにそう言う。奥さんも貴方は主人の命の恩人よ、と大歓迎してくれる。その奥さんがこんな事も言った。

「主人は青木さんを実の息子だったら良かったのに、娘が嫁いでいなかったら娘婿に出来たのにと酒に酔うと涙を溢しながら言うのよ」

 俺も実の父のように思っているから心底嬉しかった。

 今では家族のように付き合っている。そして今日、吉田さんの嫁いだ娘夫婦と孫が集まるそうだ。俺は家族じゃないし別の機会にと言ったら怒られた。

「バカヤロー!! 淋しい事を言うなよ。お前は息子だ」


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