第19話 審議

「まず君の所属と階級、氏名、年齢を述べなさい」

 俺は座ったばかりだったが再び直立不動の体制をとり質問に答えた。

 「本官は宮園署、前川交番に勤務し階級は巡査部長、青木良知二十七歳であります」

 「今回の事件だが、この場所は事件の真相を明らかにする場所でなく君が発砲し犯人が死亡した事が正当であるか否かを審議する場所である。それに対し君は何か申し開きする事があるなら述べなさい」

 「いいえ一切ありません。本官は下された処分に対して何の意義もなく従います」

 「宜しい、では君に対しての処分について述べるが、その前に今回の警察官発砲事件に対して世論から注目を集めている。これは公安委員会の意見ではなく私個人の意見であるが、制服警官は拳銃の携帯を義務付けられている。決して飾り物でないが、銃を撃てば死傷する事があり、その為に日本の警察は銃の扱いに対して世界一厳しい国である。おそらくこれがアメリカなら賞賛を浴びる行為であると思う。残念ながら日本は逆に撃った警察官を正当か否か審議しなければならない事を心苦しく思う。さて此処からは公安委員長として述べる。ここに挙がって来ている資料によると吉田警部補が二度刺され三度目の刃が喰い込む寸前で君が発砲した。まさに間一髪でその刃先が吉田警部補の腹に三センチの所で止まって撃たれた。ここが重要であり、もし君が発砲しなければ吉田警部補は確実に死に至って居ただろうと云うのが結論である。威嚇射撃の余裕もない事は証明され、我々公安委員会は君の正当性を認める事とした。私個人としては君の功績を称えたい処だ。ただ世論は無罪放免では納得出来ないと判断。拠って次のような処分を下す。一ヶ月間の謹慎、及び三ヶ月間の減棒」

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