第16話 吉田先輩の発砲事件
「実は今日来た理由はその六年前の発砲事件に関係する事だ。これは極秘中の極秘だが、その発砲したのは君の現在の上司である吉田警部補なのだ。我が署の管轄内で起きた事件だが署内では発砲者が誰であるか上部の人間しか知らない」
「え!? 吉田さん……いや警部補が、ですか」
「そうだ吉田さんと俺は当時刑事でコンビを組んでいた。今回の事件と違うのは人質がいた事だ。人質は負傷し危険な状態だった。犯人は興奮していて説得出来る状態でなくなった。吉田さんは威嚇射撃したが犯人は、それに反応したかのように人質を殺そうとした。犯人と吉田さんの距離は数メートル前後、この至近距離なら少なくて犯人だけを狙える。吉田さんが今度は犯人の腕を狙って撃ったが、犯人が少し動いたため数センチずれてナイフが吹き飛んだ。本当は最高の形で終わるはずだった。だがナイフに弾かれた銃弾が兆弾となって一般市民の老人が死んでしまったのだ」
「なんて運が悪い事か……」
総務課長は当時を思い起こしように上を向いた。更に重苦しく語り始めた。
「私がコンビを組んでいて申し訳なかった。吉田さんは拳銃の名手で有名だったんだ。だから吉田さんしか居なかった。期待に応え見事、腕ではないが刃物を撃つ落とし事が出来た。寧ろ犯人も負傷することなく刃物だけ飛んだ。まさに最高の形となった。その時は誰もがやっと歓喜したほどだった。だがそれがアダとなった。吉田さんよりも警備にも問題があった。もっと野次馬を引き下げるべきだった。野次馬がもっと離れていれば跳弾は避けられた。それを全部吉田さんの責任にかるのは酷な話だ。当時の署長や幹部は責任を問わされ飛ばされたよ。だが吉田さんを誰が責められようか」
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