第15話 吉田先輩の発砲事件
俺は堪っていた不安と緊張が緩み、涙が込み上げ来た。
「ありがとう御座います。本官のような者に温かいお言葉が身に沁みます」
小さな折り畳みのテーブルに向かい合っていたが、俺はテーブル横に周り二人に正座して深々と頭を下げた。すると代って総務課長が、良いからと座るように諭された。
「君の今の心境は痛いほど分かる。君の事は吉田さんから良く聞かされ知っている。実は吉田さんと私は同期でね、でも私の方が年は三歳下だがね。そんな訳で彼は親友に近い存在なのだ。吉田さんが定年前に一人息子が出来たような感じだと言っていた。それが君の事らしいがね。依然として意識はないのだが峠は越えたらしい命は助かるそうだよ。実は我が署で六年前にやはり警察官の発砲事件があった。日本はとかく警察官の発砲に五月蝿い国であり、拳銃はお飾りのような物になりつつある」
「はい、私もつい先ほどですがインターネットで、そんな事件があった事を知ったばかりです。でも発砲したのが誰かは知りません」
「そうか、別に隠していた訳ではないが我が署ではあまりその話題に触れたがらない志向にあった事は確かだがね」
総務課長と警部はそこで一呼吸置き、冷めかけたお茶を啜った。
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