第14話  訪れたのは警部と総務課長

それから一週間が過ぎ、今から署の総務課長が尋ねてくると連絡が入った。

 『総務課長? なんで総務なのか疑問に思った。別の署に移動なのか、それならその前に公安委員会か何かで発砲射殺に関して懲罰が下されてからだろう』

 俺は自分がどんな処分を受けるのか犯罪者が判決を下されるような心境なのだ。まったく関係のない部所からなんの用か想像が付かなかった。

 午前十時、アパートの鉄で出来た階段を登ってくる足跡がした。まるで死刑執行の刑務官が来たように思えた。カツンカツン乾いた靴音近づいて来る。やがてブザーの音がした。


 俺は古びたアルミで出来たドアを開け、その場で直立不動の体制で敬礼をした。一人かと思ったら二人だった。俺は中へ招き入れた。

 一人は総務課長で顔は知っている。そしてもう一人はあの事件の時に担当した森下警部だった。その森下警部が先に口を開いた。

 「まず事件の経過から話そう。逃げた犯人だが君が発砲した……いや吉田警部補を刺した犯人の遺留品から、もう一人の男の身元が判明し昨夜逮捕した。二人の関係は薬(麻薬物)の取引相手と判明。共に暴力団の一員だが同じ組織ではないそうだ。いずれにせよ君が撃った相手は前科者であり善人ではない。だが発砲したものが正当か否かは、明後日出頭命令が下れると思うが、其処で質疑応答により公安委員会からなんらかの決定が下される。実は総務課長が訪れたのには訳がある。その前に我々宮園署は署長始め署員全員が君の正当性が認められるように祈っている。更に全国の警察官から、これが不当というなら我々警察官はやっていられないと苦情が相次いだそうだ。だから警察官を辞めようとか悲観的な事は考えるな。良いな」

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