第13話 謹慎処分

 もうこの時点で俺は警察官として失格なのか、緊迫した状況だったが俺が発砲していなければ吉田さんは確実に死んでいた。まだ生死の境だがこれで死なれては俺も吉田さん救われない。犯人が死んだのは仕方がないとは言わないし他人の命を奪ったのだから。

 拳銃とは恐ろしいものだ。一発の銃弾で命を奪うだから、拳銃の取り扱いが厳しいのは頷ける。しかし命を奪うばかりではなく他の人の命を救うことも出来る。吉田さんが助かれば俺の心の中では救ったと思えるのだが。

 事件から三日過ぎた。三日三晩事情聴取されやっと開放されたが、これで終った訳ではない、むしろこれから始まるのだ。


 考えても仕方がない。それよりまず吉田さんが心配だ。未だに意識不明の重体らしい面会出来る状態ではないらしいが病院に行き顔だけでも見たい。

大先輩というより父親見たいな存在になりつつある人だった。生まれて来る孫を見ないでどうするのと励ましたい。俺は取り敢えず謹慎処分を受け自宅待機を命じられたが、吉田さんへの面会と近所での買い物だけは許されている。

俺はその足で病院に向った。しかし面会謝絶で断られたが諦める訳には行かない。担当医師に状況を伺った。幸い手術は成功したが、ここ一週間が生死の境だという。もし治っても後遺症が残る可能性があるという。

俺は仕方なく病院を後にして自宅のあるアパートに引き返した。勤めている交番から一キロと離れていないアパートだ。今は別の警察官が俺達に代り常勤している。

しかしその交番に出向く事も禁止されており、事件の経過を知る由もない。

 俺はパソコンを起動させた。案の定、先日の事件の事が沢山載っていた。

 『またも宮園警察署で警察官の発砲射殺事件』そんな記事が見つかった。

 またもとは以前もあった事になる。その事件を調べて見た。


 ある刑事が人質を取って立て篭もった男に発砲したが兆弾となって市民が犠牲になったとある。勿論、その刑事の名前は公表されていないし警察も発表していない。

 その記事には賛否両論が渦巻いていた。やもえない行為と言う者や警察なら犯人逮捕の為とは言え市民を犠牲にしても許されるのかなどと意見が寄せられている。

 どうやらその事件は六年前に起きたものらしい。俺はまだその時は警官ではなく学生だった。記憶にも残っていない。


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