第11話  犯人も重体

一瞬の出来事だった。何度も研修で教わった基本的な事件への対応がどれだけ出来たのだろうか? 尊敬する大先輩が重体、殺されたかも知れない事態に俺は本能的に行動してしまったのか? 基本である威嚇発砲さえしていない。しかし威嚇発砲する余裕はなかった。威嚇発砲しても犯人は刃物を捨てただろうか? 今になって大変な事をしてしまったと思う。

 本署からは副署長まで駆けつけた。部下が刺され重体となればノホホンと挙がってくる情報を待っている訳には行かないのだろう。

 吉田さんは俺の手から離れ救急車に乗せられた。同時に撃たれた犯人も二台目の救急で運ばれた。俺は本署から来た捜査一課の森下警部と副署長に厳しい口調で呼ばれた。


 「一体どういう事だ!?」

 「本官と吉田警部補と飲み屋街から中央公園を見廻りこの参道へとパトロールしました。するとこの杉の木付近で二人の男の影が見えました。こんな時間にこの参道に隠れるように話しているのを不審に思い、吉田警部補が懐中電灯を照らし二人に男近づいて行きました。どうも怪しいというので警部補の指示で本官は廻り込むように後ろ側に廻る途中でした。その時間は一分足らずで一人の男が急に逃げ出し、警部補はもう一人の男の腕を掴むのが見えました。本官は逃げた男を追いかけようとした途端、うめき声が聞こえ本官はそちらの方に振り返りました。すると警部補が膝を突き男がおそらく二振り目と思われる刃物を警部補に突き刺すのが見えました。本官は慌て拳銃を取り出しました。すると男は更に警部補に刃物向け突き刺す寸前と同時に本官は男を目がけ発砲しました。男はその場に倒れましたが本官は警部補を抱き起こしながらピーフォンで通報した次第であります」


 森下警部は無言で副署長の方を振り向いた。警部補が刺さられたのは大問題だが自分が発砲したのが問題になっているようである。

 数分して自分に詰問している森下警部に別の警官が耳元でなにやら囁いた。


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